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帰り道、寄り道した。
毛糸玉を買った帰り道、寄り道して座ったベンチに座る。
「寒いね。何か、暖かい物を買ってこようか?」
そう言って立ち上がるワタルの、学生服の上から着た
パーカーの裾を由羅が摑む。
「ここにいて欲しいの?」
こくんと由羅はうなずく。
ワタルは、また座った。
「でも寒いでしょ?顔が赤いし」
そう言うとワタルは自分のパーカーを脱いで、由羅に着せかけた。
「ちょっと、それじゃ日向くんが寒いでしょ!」
12月より1月が、体感温度は低い。
なのにワタルは「制服のジャケットがあるから平気」と噓ぶく。
寒いくせに・・と小声で、由羅は呟いた。
そしておもむろにさっきのトートバックから、何かを取り出す。
ふわり。
暖かい物がワタルの首筋に巻き付く。
「・・・え?・・」とワタル。
マフラーだ。
濃いスカイブルーのマフラー。
「慌てて編んだから、出来が良くないの。ゴメン。」
「あの・・えっと・・また編み直すから」
そう言った由羅は耳まで、真っ赤だ。熱じゃないらしい。
ワタルは、ほっとした。
「でも、暖かいよ。これ」
「え?」
「凄く、暖かい。ほら」
ワタルが長いマフラーを半分、由羅に巻き付ける。
長さが足りなくならない様に、肩を引き寄せた。
由羅は真っ赤になる。
「くっついてたら、もっと暖かいよ」
その言葉に由羅はくっついた。
「本当。暖かいね」
##
公園の茂みに隠れてマサハルは考える。
「どうしよう、この缶コーヒー。出るタイミングが・・」
「しかし2人に風邪、ひかせるのもなぁ」
「もう少しだけ待って出よう。コーヒーが冷めちまう」
「しかし由羅、プレゼント間に合ったんだ」
マサハルの耳に二人の声が聞こえる。
「ゴメン。1ヶ月遅れのプレゼントだよね?」
由羅の声にワタルが笑う。
「1ヶ月遅れのクリスマスプレゼントでしょ?」
そこへ茂みから飛び出てマサハルが叫んだ。
「メリークリスマス!俺からもプレゼント!」
そう言って、二人のベンチの背後の茂みから、缶コーヒーの
雨を2人に降らす。
「わぁ、ビックリした!」とワタル。
由羅もキョトンとしている。
「まぁ由羅のマフラーもいいけどよ、これ飲んで温まれよ」
アツアツの缶コーヒー。
ベンチの二人と、ベンチの背もたれに腰かけた1人。
北風も3人の友情の、熱さには敵わない。
特に愛情のこもった、由羅の手作りマフラーの温もりには。
END。
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