⁑ プロローグ。クリスマスなのに ⁑

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⁑ プロローグ。クリスマスなのに ⁑

  木枯らし舞う風が、黒髪を揺らす。 街はクリスマス色に染まっている。 サンタが通り過ぎる。  由羅(ゆら)カオルは息を吐いた。 すぐ、白く凍って消える。 (日向(ひなた)くん…) ショウウィンドウから、中を見る。 お気に入りの手芸店。 「プレゼント編んでくれるの?だったら一緒に毛糸を選ぼうよ」 太陽みたいに日向くんが笑う。 日向くんは太陽見たい。 私はヒマワリ。 いつもあなたを、追いかける。 1人でどんどん先へ行ってしまう。 でも途中で気付いて、振り返りいつも待っててくれる。 そんな日向くんが、大好きなの。  「来ないなぁー」 お店で待ってても来る訳がない。 そもそも、待ち合わせをしてないのだ。 「クリスマスになっちゃた。」 約束の買い物デート。 待ってる私。 せめて、マフラーくらい編んであげたかったのに。 でも日向くんが、私を困らせるわけがない。 いつも誰かに捕まって、一緒に帰れない。 面倒事に、捕まってるのだ。 日向くんは、お人好し。 自分から首を突っ込んで、行く時もある。 困った人を、見てられないのだ。 「用事じゃ、仕方ないよね」 風が冷たい。           ##  由羅は学園のヒロイン。 華陽(かよう)学園で中・高等部を問わずの人気。 由羅は嫌ってるが、ファンクラブがあるほどだ。 なのに、大好きな日向くんとはすれ違い。 学園のヒロインでも、好きな人といつも一緒にいられない。 仲良しカップルの二人なのに。 ()がれる想いが、胸を熱くする。 (上手くいかないな)  子供の頃、サンタを信じていた。 本当だと信じた。 いつもサンタは叶えてくれる。 「いつから、信じなくなったんだろ?」 でも日向くんなら、こういう。 信じなきゃ何も、叶わない。 まず信じなくちゃ。 信じれば、夢は叶う。 そうだ!夢を見よう。 楽しみは、これから。 進む足が弾む。 もともと由羅は、悩むのが下手だ。 サンタがケーキを売っている。 街はクリスマス色。 鼻にチキンの匂い。 (そうだ、クラブでマサハルがお腹すかせてるかも) 由羅は近くの店に駆け込んだ。  
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