5人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
⁑ プロローグ。クリスマスなのに ⁑
木枯らし舞う風が、黒髪を揺らす。
街はクリスマス色に染まっている。
サンタが通り過ぎる。
由羅カオルは息を吐いた。
すぐ、白く凍って消える。
(日向くん…)
ショウウィンドウから、中を見る。
お気に入りの手芸店。
「プレゼント編んでくれるの?だったら一緒に毛糸を選ぼうよ」
太陽みたいに日向くんが笑う。
日向くんは太陽見たい。
私はヒマワリ。
いつもあなたを、追いかける。
1人でどんどん先へ行ってしまう。
でも途中で気付いて、振り返りいつも待っててくれる。
そんな日向くんが、大好きなの。
「来ないなぁー」
お店で待ってても来る訳がない。
そもそも、待ち合わせをしてないのだ。
「クリスマスになっちゃた。」
約束の買い物デート。
待ってる私。
せめて、マフラーくらい編んであげたかったのに。
でも日向くんが、私を困らせるわけがない。
いつも誰かに捕まって、一緒に帰れない。
面倒事に、捕まってるのだ。
日向くんは、お人好し。
自分から首を突っ込んで、行く時もある。
困った人を、見てられないのだ。
「用事じゃ、仕方ないよね」
風が冷たい。
##
由羅は学園のヒロイン。
華陽学園で中・高等部を問わずの人気。
由羅は嫌ってるが、ファンクラブがあるほどだ。
なのに、大好きな日向くんとはすれ違い。
学園のヒロインでも、好きな人といつも一緒にいられない。
仲良しカップルの二人なのに。
焦がれる想いが、胸を熱くする。
(上手くいかないな)
子供の頃、サンタを信じていた。
本当だと信じた。
いつもサンタは叶えてくれる。
「いつから、信じなくなったんだろ?」
でも日向くんなら、こういう。
信じなきゃ何も、叶わない。
まず信じなくちゃ。
信じれば、夢は叶う。
そうだ!夢を見よう。
楽しみは、これから。
進む足が弾む。
もともと由羅は、悩むのが下手だ。
サンタがケーキを売っている。
街はクリスマス色。
鼻にチキンの匂い。
(そうだ、クラブでマサハルがお腹すかせてるかも)
由羅は近くの店に駆け込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!