気に入らないんですけど!

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「私がやってきた事が、その女の所為で全部白紙ですよ?信じられません! 最初から気に入らなかったんですよ!! 子供を産んだ女は母の座に座って、それだけで偉いと思ってる。我儘を言えば、真が何でも聞いてくれると思ってる!私の真だったわ!他にも何人か女はいたけど、私だけは特別だった!! あんたがいなければ、今でも私が特別なのよ!消えてよ!!」 信じられない位の大声で叫ばれて、水菜も驚きながら真の背中から半分顔を出して見ていた。 仕事の話…はもう彼女の中にはない様に思いながら水菜は見た。 「我儘を言えば」、の辺りから真は向きを変えて水菜を抱きしめる形になり、抱きしめながら、何度も耳元で囁いてくれていた。 「もう違う。聞かなくていい。今は水菜が一番大事だ。ごめん、水菜。大丈夫だ、落ち着いて…。」 真の言葉の方が痛々しくて傷付いている気がして、水菜も真の腰の横部分のシャツをぎゅっと握っていた。 その姿を見て沢田は余計に怒りを爆発させた。 「そういうとこよ!そうやって影に隠れて守られて…そんな女が一人前に仕事?ふざけないで!G、forestの社長にもそうやって甘えて機嫌を取ったのよね?担当者にも甘い言葉でも使ったの!英語話せないて言いながら、片言で?片言は可愛いって言うものね!日本人の顔は童顔で小さいから若く見えるし、男なんて手玉に取るのも簡単なんでしょうね!」 「マリン!!いい加減…。」 「いい加減にしてもらえない!!」 (いい加減が被った…。) と真は考えながら声の大きさに驚いて、茫然と沢田に近寄って行く水菜を見ていた。 我に返って水菜を止め様と腕を掴んだ。 「大丈夫よ?私も…何を言われても許せる訳じゃないの。言いたい事を散々言ったんだから、私も言わせてもらう。いいわよね?」 振り返り笑顔で言われてしまうので、うんうんと頷いた。 「戻って来いよ?傷付く前に…。」 気の利いた事は言えずに、それだけを言うとまた水菜は優しい顔で微笑でくれた。
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