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「マリン!!何してる!」
真が水菜に駆け寄り、立花は真の顔を見て小さく謝り沢田の手を捕んだ。
「水菜、大丈夫か?」
「この女が悪いんじゃない!人を馬鹿にして!真!私にはずっと優しかったでしょ?ただのセフレじゃなかったわよね?自宅にも泊めてくれて好きに使っていいって…他の子は自宅に入れてないでしょ?……自宅の真のベッドでも、ここでも……あんなに愛し合ったじゃない!!」
「過去の事だ!」
大声で言いながら水菜の手を握る。
沢田が何故急にそんな事を言い出したのか、真には理解出来なかった。
今度は優しい声で水菜に言う。
「……過去の…事だよ、水菜。本当だ。お願いだから別れるとか言わないって約束して?」
顔を向けた水菜は優しい顔で微笑んでいたが、片方の頬は赤くなっていた。
「信じるって、言ったでしょ?何となくね、彼女はそうかもって思ってた。」
真に言ってから沢田を睨んだ。
(水菜は沢田の気持ちを考えていたのか?)
そう考えるといつかの水菜の返事の「間」も、納得出来た。
それが本当なら自分を好きな相手を会社に入れた事になり、水菜には裏切り行為にも取れる。
自分の馬鹿を呪った。
叩かれた水菜より、真の声の方が泣きそうな声に聞こえた。
だから過去の愛し合ったという言葉を聞いても、信じられると水菜は強く思えた。
「ただのセフレじゃなかったとしても…過去の事よ。あなたはアメリカに行く時、関係を精算しているし結婚もしてる。ここからは真と話し合って?ただ……悪いけど今更昔の人に消えてとか言われても、真を簡単に渡す訳にはいかないの。私も闘わせてもらうわ。」
キツイ目線を沢田に送り、水菜はため息を吐いて真の横に戻る。
「それからG、forestは少し前から要望のズレを感じていて、担当者は悩んでいたそうよ。何度も話をしたけど契約は結ばれているの一言で聞いてもらえもしない、耳も貸さない相手とずっと仕事をする事に不安を感じた。これは担当者であるあなたのミスです。契約破棄、賠償の話まで出ていたのよ?あなたに責任が取れるとは思えない。賠償阻止の為、信頼回復の為に私は動きました。
これは社長の許可も得ています。契約社員と言えど社員です。どうされるおつもりですか?」
静かな声で水菜が聞くと、沢田はまた水菜をキッと睨んだ。
「辞めてあげるわよ!それで満足?でも真は諦めないわよ!取られてから悔しがるといいわ!」
立花は肩を竦めて首を振りお手上げのポーズをし、真は声を荒げた。
「10年も経ってから何を言ってる!向こうで結婚もしたんだろ?今更好きもないだろう?そんな面倒な事なら悪いが辞めてもらう。」
「ううん、契約がちゃんと終わるまでいてもらう。」
直ぐに真の言葉に被せる様に強い口調で言う。
「はぁ?水菜、何言って…。」
呆れた真の顔を見て水菜は笑った。
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