補佐、沢田

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「本当に社長は女心に鈍いですね?過去の沢田マリンの性格を聞いて私の心が痛まないとでも?」 淡々と沢田の姿を確認しながら、窓に目を向けて水菜は言う。 「そうよ!真、宇宙馬鹿!考えなくても楽でああしてこうしてって言うから?それどうせあれ欲しい、これ欲しい、泊めて?うんいいよ?考えなくてもいいってそういう事でしょ?当時のお付き合いを聞かされて楽しい妻がいるわけないでしょ?彼女でも前の彼女の話されたら嫌よ。水菜に感謝しなさいよ!」 怒った顔で梨香が言うと真は目線を幸人に送るが、幸人は無言で首を振った。 「真が鈍いのは今に始まった事ではないので…。そこに期待もしてないですし……さて、初戦、行って参ります。佐藤をお願いします。」 その場の全員の顔を見て淡々と水菜は言う。 「本当に大丈夫か?今からでも梨香に…。」 心配して真は言うが食い気味に水菜は答える。 「大丈夫です。英語に関しては社長、副社長、今川室長、佐藤さんにも協力をお願いする事があると思います。宜しくお願いします。」 丁寧にドアの前でお辞儀をして、水菜は部屋を出て行った。 「……あのぉ〜。私ここへ呼ばれた理由が分からないのですが…。」 一番後ろでオドオドと佐藤が呟いた。 「倉田さんは三週間で復帰するけど18時には帰るわ。子供が出来れば午前中だけ、15時上がりも増える。石原も子供がいるから15時まで、あなたが休みを取る時は残業してくれるけど毎日は無理だわ。石原が帰った後、石原のサポートをするのは貴方しかいないの。沢田マリンの事もお願いしたいのよ。勿論、最終的な報告は社長、副社長が聞くわ。いない事もあるから貴方に任せたいのよ。」 「えっ?任せて……無理です!アメリカ案件なんて…。」 泣きそうな顔で佐藤が答える。 「丸投げする訳じゃない。石原が担当者だ。佐藤には石原の下に付いて石原が沢田をどう使うか、相手担当者とどう話をするか…直接学んで欲しい。佐藤にはいい勉強になる。石原の駄目なところを見つけたら見習わないようにすれば良い。良いところは盗めばいい。出来たら…佐藤はいい秘書になる。」 「あら?社長っぽい…。」 悪戯っぽく梨香が言うと、三人は笑い出した。 「社長です!」 答えながら真は窓にへばり付いていた。 水菜が心配で仕方なかった。
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