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「今の話しを聞く分には、当時からい…梨香さんは会社にいたんですね?」
今川室長と言いそうになり沢田は言い直した。
「いたわよ?こう見えても創業メンバーよ?仕事が上手く行くと三人でこういうお店に祝杯しに来てた。最初の一年だけどね?沢田さんはあの頃も思ってたけど…。」
途中まで話して水菜の顔を梨香は見る。
その様子に気付いて、唇に付けていたグラスを離して水菜は慌てて答えた。
「…ん、構わないわよ?昔の話でも何でも。」
「ほんとに?離婚、とか言わない?」
くすくすと笑いながら、
「離婚!ていうほどの内容を話す気?」
と訊き返す。
「違うけどぉ…どこまでの話がセーフか分からないじゃない?」
と不安そうに梨香が話すので、水菜は笑いながら、
「沢田さんに関する事は、今この場で全部セーフにするわ。店を出たら忘れる。お酒で流す。」
と、答えて自分のグラスを空けた。
「あの頃の沢田さんは真が好きな様には見えなかった。だから二人共割り切った関係なんだって思ってた。都合、良かったんでしょ?真は部屋には殆どいないし、家に居たくなかったんでしょ?真は面倒が嫌いでデートとかするのも嫌で手料理とか作る女性も嫌がってたし、沢田さんには良い相手だったのよね。」
梨香が言い直すと沢田もグラスをクーッと飲み、テーブルに置いて言う。
「そうよ?楽だったし便利だった。部屋はホテルよりゴージャスで綺麗だし、ホテルより気を使わなくて良かった。頼めばデリバリーもクリーニングも電話一つで手配出来る。時々、相手をすればいいだけで、強引で下手くそな彼氏よりずっとマシだった。面倒な言葉もないし、苦手な料理もしなくていい。真は女が作る物なんて怖くて食べられないって…デリバリーしか食べてるの見た事なかった。」
「すっごい…贅沢ですね?昔の彼女に毒でも盛られた経験でもあるんですか?社長…。」
カクテルを飲み干した佐藤も言い、手を挙げてお代わりを頼んだ。
「贅沢で面倒が嫌いな男よ?それが帰って来たら結婚したって聞いたら誰だって驚くでしょ?しかも相手が…これ!七瀬水菜!化粧も薄いし、胸も小さい…おまけに見て?これ、このポーカーフェイス。普通でしょ?驚いたわよ。どんな高慢なお嬢様と結婚するのか、永遠に一人のどっちかだと思ってたから…。」
お盆に載せられてカクテルが届くと、三人はそれぞれ手に取り飲んだ。
飲んでいるとすぐにまたカクテルが人数分、お盆に載せられて運ばれて来た。
「誰か頼みました?」
梨香が聞くと店員があちらからと、手を差し出した。
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