過去

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言われた方向に全員、同時に顔を向けた。 カウンター席に2人組の男性が座ってこちらに笑顔を向けていた。 「梨香に…かな?」 と水菜が小さく言うと、 「否定はしませんけど、一番年上ですよね?この場合私じゃないですか?」 と沢田が言いながら奢りのカクテルを手にして相手に掲げてから飲む。 「お〜お、言ったね?」 梨香が反応して笑いながら返すと、佐藤も声を上げる。 「年齢で言ったら私ですよね?一番若いです!!」 「若ければいいっていうものでもないわよ?」 「なんでですか?私一人20代ですよ?」 沢田と佐藤が言い争うと、梨香はグラスを手に席を立つ。 「そこまで!!確かめて来る。このまま黙って飲んでたらこっち来そうだし、それだと水菜が明らかに嫌そうだし、お礼言ってくる!」 水菜は梨香に小さく頭を下げて、奢りのカクテルに口をつけた。 「一緒に飲む位いいのに…。どうして嫌なの?石原さん。」 沢田に言われて少し悩んで、男性が苦手である事を話した。 「え?嘘?それでよく結婚したわね?真なんて浮気ばっかりじゃない?ねぇ、ちょっとは慣れた方がいいわよ!行こう!!」 手を引かれて梨香が飲んでいるところまで連れて行かれる。 苦手と話した事に失敗したと思いながら、強制的に連れて行かれてカクテルのお礼を言い、梨香の上手な言い訳とフォローで無事に元の席に戻って来れた。 水菜は大きくため息を吐いて、ボーイにお酒を注文した。 「で?留守番していた私にありますよね?報告。」 何杯目かのカクテルを飲みながら佐藤は沢田を見て言う。 「報告?……ああ!誰を狙っていたかね?残念だけど私は聞いてないわ。」 素っ気なく沢田が答えると佐藤は剥れる。 「はいはい、聞いたわよ?あちら2人組でしょ?奥の男性が沢田さん目当て。金髪が好みみたいね?」 「年齢無関係じゃないですかぁ〜。」 剥れて言うと梨香はさらに続ける。 「手前の男性が水菜狙い。水菜が挨拶に来た事で満足して頂いて…水菜は連絡先も拒否しちゃったし…仕方なく既婚者ですと言っておいたわ。」 「ええ〜〜!つまんないですよぉ〜。既婚者好きなだけじゃないですかぁ。」 「それ位にしとかないと…明日酷いわよ?」 くすくす笑いながら水菜が言うと、佐藤も負けじと反撃する。 「石原さんはそんな事しませんから、安心して言っていいんです!」 (…酔ってるなぁ。) と苦笑して、水菜も届いたカクテルをちびちび飲んだ。 暫くの間、梨香が声を掛けられたりしてテーブルが盛り上がり、落ち着いた頃、思い出した様に沢田が話し出した。 「梨香さんのところに来た人も嫌そうでしたねぇ…石原さん。それで結婚したのが本当に不思議です。話を元に戻すとね?正直言えば、どう〜でもいいの。真の事ですけど…面倒な男ですからね。ただ余計な事聞かないし、寂しい時は慰めて欲しいでしょ?」 「………寂しかったんだ。」 沢田の声に水菜が言葉を入れると、沢田は暫く停止した。
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