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「真の事好きなのかなって私も最初は思ったけど、一緒にいる時間が長くなって違うなぁって思った。妻が欲しかった?もしかして…。」 梨香の横に座っていて、水菜からは少し斜め右に見える沢田を見つめて聞いた。 沢田は頭を戻して、水菜の方を向いた。 ため息を大きく吐いてから話し始めた。 「妻と母ね、欲しかったのは…。真なら楽かなって考えた。家事しなくてもお手伝いさん雇えるし、真は女が作るご飯食べないし。可愛い子供も手に入る。」 「誤算だらけだよぉ〜?お手伝いいないし、真、ランチ会議も嫌がるし、出来ればお昼は水菜のお弁当って言い張るから、水菜は殆ど毎日お弁当作ってる。泊まり込みも長くなると夕飯差し入れるし、そういう時は社員の分もだよ?」 既に6杯目のカクテルを飲みながら、梨香は笑って話した。 「あの真が?じゃあ、無駄な誘惑をしたって事ね。今も料理嫌いなのよね。」 またため息を吐いて言い、沢田は水菜に軽く頭を下げた。 「ごめんなさい。あなたから真を取ろうとしてた。出来ると思ってた。私がされたから…。」 三人とも酔いが覚めた様に沢田を見た。 「向こうで弁護士と結婚して、幸せだったけど子供が出来なかった。調べたら私に原因があったの。口では良い事を言っておきながら、一年経ったら若い子を妊娠させてた。だから別れてくれって…私って何?子供を産む道具?あの人の妻じゃないの?妻って…子供産まないといられないの?」 話しながら沢田の瞳から涙が溢れて来て、流れた。 「……だから子供もまとめて妻を取ろうとした?」 訊き返すと、水菜を見て泣きながら謝った。 「…真に、仕返ししたい気持ちもあった。若い時、一緒に遊んで楽しい時間を過ごしてたのに、私は不幸で一人で…真は可愛い子供が三人もいて不公平だって思ったから…。八つ当たりよ、分かってる。真が幸せそうにすればするほど、相手のあなたが憎らしく思えた。」 「……その辛さを理解しようと努力は出来るけど…大変だったわね…としか私には言えないわ。元のご主人は酷いと思う。それでも取るもの沢山取って、沢田さんには前を向いて欲しい。いつか元のご主人に会う事があったら相手が後悔する位、幸せになって?」 水菜が悲しい表情で言うと、沢田はくすりと笑う。 「私…真を誘惑したわよ?いいの?そんな悠長に励まして。」 「んーそうね?誘惑に成功したら大変かもよ?秘書しながら子育てして、家事もして、あ、慰謝料も二人から貰えるわね?」 微笑んで水菜が言うと沢田の隣から声がする。 「あぁ〜!もう!無理ですよぉ〜沢田さんには!!うちの社長、石原さんいないと叫びますからね?絶対、無理です!料理毎日ですよぉ!!」 突然、佐藤が大きな声を出して、沢田の肩を叩きながら笑いながら言った。 「………梨香?どれだけ飲ませたの?」 その様子を見て水菜が梨香に聞く。 「……カクテルを6杯目?あ、7杯目か…え?私もそうだし、沢田さんもよね?酔ってる?」 沢田は首を振りながら横に座る佐藤を見た。 既にソファにもたれて眠っていた。 「「撃沈!!」」 水菜と梨香が声を合わせて言うと、三人で笑い出していた。
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