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いつもと変わらないメンバーでスケジュール確認をして、佐藤も社長にビクビクする回数が減り、仕事も要領良くこなせる様になって来た。
エターナルエモーションでは、新卒での新入社員は4月から研修期間がある。
7月から配属先が決まり本格的に仕事が始まる。
佐藤の同期は三人で、研修期間は常に三人で行動していた。
社長の顔を見たのは一番初めの挨拶、廊下で見掛ける程度で当然社長室に入る機会はない。
月曜の朝礼でさえ、副社長が挨拶をして社長は顔を出さない。
そんな中で噂だけは聞く。
ーー秘書の石原さんが奥様…気に入らないとコーヒー投げるって…怒鳴ってるの聞こえるって…。ーー
エタエモの七瀬社長のいい噂は僅かしかない。
無能と言われた、会議で怒鳴られた事がある、出来ないなら…休みとるなと言われた…入社当初はブラック企業だ!と心の中で思っていた。
そんな噂の中、秘書課に配属されて毎朝スケジュール確認に社長の前に立つ事になったので、ずっとビクビクしていたのだが、不機嫌そうでもコーヒーを投げる事はなかったので少しずつ慣れて来ていた。
エタエモも次の世代に交代する時期かも知れないと、佐藤を見ながら水菜も考えていた。
佐藤が全てのスケジュール確認を終えると、真は要望があればその場で言う。
「ベターの引き渡しは担当チームのチームリーダーに頼んで。終了まで俺が出る必要はない。」
不機嫌な顔で言われて、少し怯みながらも佐藤は口を開いた。
「お言葉ですが、ベターの方からは社長の岩永さんがおいでになられます。あちらが社長自らおいでになるのに、出迎える側が社長不在というのも…。」
(お…!いいぞ!頑張れ、佐藤さん!)
水菜も心の中で応援する。
倉田も下で手を握ってゲンコツにしているのが見えた。
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