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高音から低音に下がる三音。
軽快なリズムでメロディにすると言い張った真を止めて、仕事の邪魔になるからポンでいい!と水菜が強く要望して、結果、これで収まった。
今になって冷静に聞くと、何とも間の抜けた音に聴こえる。
片耳にイヤホンマイクを付けて「S」と「F1」キーボードを押す。
「……はい。石原です。」
『そこは水菜です。ハートマーク…だろ?』
水菜の耳に優しいふざけた声が聴こえた。
「社長は自室で周りに誰もいませんからいいでしょうけど、私の周りには人が居ります。」
『そうかもだけど!何で音声だけ?カメラ付けてよ!』
「仕事中ですので…。」
淡々と話す水菜とテンションの高い真。
『水菜、約束だろ?呼び出ししたらいつでも顔を見せてくれる!』
カタカタとキーボードを打ち込みながら、モニターの右上に小さく真の顔が映し出されている。
「見えますよ?」
淡々と答えると膨れた顔になる。
『俺には見えてない!!約束違反だ!』
ふぅと息を吐いて、カメラの接続を操作した。
「これで良いですか?」
『いい!!水菜〜!見えるかぁ?』
「手を振らないで仕事して下さい!」
叱られてショボンとなって、カタカタとキーボードを打つ手が少し見えた。
それを確認してから、水菜は訊き返した。
「新しいゲームを作るんですよね?」
『ああ、水菜がナンパされた夜に遊んでた奴な?』
「根に持ちますね?」
『水菜に根に持ってる訳じゃない!そのナンパ男をどうにかしたいんだ。』
「声掛けて来ただけでどうにかしなくていいです。」
『水菜ぁ?俺さぁ…最近、心配な事があってさ?』
双方、仕事をカタカタ言わせながら、話をする。
水菜は淡々と無表情で、真は変わらないハイテンションで…。
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