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珍しい真の心配、というワードに水菜も少し手を止めた。
「心配、ですか?何でしょうか?」
それでも無表情は変わらない。
『水菜のナンパだけでも探してなんかしてやりたくなるのに、真夏が彼氏連れて来たら絶対、彼氏を虐めちゃうよなぁ。そんでさ?そんな事したら真夏にお父さん嫌い!とか言われて、水菜にも呆れられてさ?でも真夏の彼氏絶対気に入らないし!俺どうしたらいいと思う?』
「………。」
(なんかしてやりたくなる…の、なんかって何?何をする気なの?違うわね……そこじゃないわね。真夏の彼氏?まだいない彼氏の話?10年位先の事よね?でも10年って案外、あっという間かしら?)
返事をどう返そうか暫く考えて水菜は無言になった。
『水菜?おぉ〜い!』
はっと我に返り、水菜はカメラに笑顔を向ける。
『……困ったんだな?』
と真に言われて、さらに笑顔を向けた。
「そろそろプリントアウトしたいので宜しいでしょうか?」
『あ、切る気だな!………ていうか、水菜。そこフロアか?後ろの壁…違くないか?』
真にしては目敏いなぁと思いながらすんなりと答える。
「フロアじゃないですよ?ミーティングルームです。」
『え?何で?』
「SEの古株さん達はいいのですけど、やはり社長の奥さんとなると慣れていないSEさん達は気を遣う様でして…。聞き取りを済ませたら入力はこちらで行っています。真から通話があっても気になるみたいです。私と真の会話は社員には聞かせられない位、お馬鹿な内容なんですけどね?だからこそ、ミーティングルームでちょうどいいとも言えますけど…。」
苦笑しながら水菜が話すと、珍しく真が無反応だった。
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