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「コンコン!」
「失礼致します。」
ノックしてドアを開けるまで3秒。
部屋に入ると、ギロッと睨まれる。
「水菜は呼んでないぞ!」
(ご機嫌悪っ…。)
心の声は封印して笑顔で返す。
「呼ばれてはおりません。カップを片付けに参りました。割れた音が聴こえましたので…。」
「そんなの後でいい!!出てけ!おい!どうする気だ?ギリギリになっても俺に振れば助けてもらえると思ってるのか?スーツマンか、俺は!そんな無茶出来るか!!」
真が怒鳴る間に床の上の割れたカップを拾い集めて、手に持っていたお盆に載せる。
立ち上がりながら、社長を見て微笑む。
「無理ですよねぇ……スーパーマンじゃないですし…ねぇ?ですが、怒鳴る間に早く席にお戻しになられて仕事をさせた方が少しでも進むと思いますけど…あと…このカップ、社長のお気に入りでしたけど…棄てていいですよね?」
と、水菜は淡々と言う。
「水菜!口を出すな!」
ジロッ!と睨まれて言われるが水菜は引かない、引けない理由もあった。
「出します。私はフロア統括マネージャーです。フロア全体のスケジュール管理をし損ねていた私のミスでもあります。今から急いで間に合う様に他の方のスケジュールを確認致します。ですから直ぐに仕事に戻して下さい。お願いします。」
「……確かに、フロア統括マネージャーのミスだな。いいだろう、お前、戻って直ぐ仕事しろ!これからは統括マネージャーにスケジュール説明しろよ!俺は引き受けないからな!!」
「はい、すみませんでした!!間に合わせます!」
泣きそうな顔でフロアに戻って行く。
「本当に申し訳ございません。空いている者を探しますので失礼します。」
頭を深く下げて、水菜も部屋を出ようと後ろを向くと、少し怒った真の声が聞こえた。
「水菜!!統括マネージャーとして失態だ!」
「…はい。聞き取りが不十分でした。申し訳……。」
「埋め合わせは出来ると信じてるが、困ったら言え。奥さんのミスは俺のミスだ。ギリでも手伝う。持って来い。」
頭を上げながら、小さく訊き返す。
「い…いの?だって、さっき手伝わないって…。社長…仕事いっぱい抱えているでしょう?」
困った顔をして真は笑う。
「しょうがない。水菜のミスって言われたらどうしようもない。俺は水菜のスーツマンだからな?」
「………さっきもさり気なく訂正したつもりだけど…スーツマンじゃなくて………スーパーマンだと思うの。」
と水菜が淡々と言うと、真は暫く停止した。
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