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梨香が子供を引き取り帰ると、真はやれやれとソファに座った。
8月、夏休みだから空も水菜が会社に来る時には一緒に来る。
真夏と海は託児所が預かってくれるので、空は短い時間ではあるが両親を独り占めできて嬉しそうだった。
「お母さん、こっちのソファにいてもいい?」
仮眠室から出て来て、社長室のソファに座る。
「良いけど、お母さんお仕事するよ?遊べないよ?」
「うん、しずかにしてるね?」
「じゃあ、頑張って急いでやるね?お昼は下のフロアに行って3人で食べようね。」
水菜が言うと空は嬉しそうに笑う。
「ほんと?3人で?………でも真夏と海は?」
「今日は託児所にお弁当預けてあるから大丈夫。お盆休みになったらみんなで食べれるから、今日は空と3人でね。たまにはいいでしょ?」
「そうだな。空も小学生だし、なかなかこんな機会ないからな?今日は3人でお昼にしようか。」
モニターを見ていた真も顔を向けて空に言う。
嬉しそうに照れて笑う空を、水菜も真も嬉しく思いながら見ていた。
長男だからお兄ちゃんだから、聞き分けが良いからとつい甘えがちだ。
小学校入学式の前日に、水菜と真はこんな話をしていた。
「聞き分けがいい?いい事だろ?」
「思い出してよ?空、本当は真に似て我儘だったわよ?聞き分けが良くなったのは海が産まれた頃からだわ。」
「お兄ちゃんの自覚が出たんだろ?」
「そうよ?お兄ちゃんにならなくちゃいけなくなったの。無理させてるのよ。また赤ちゃんが生まれたらお兄ちゃんになっちゃうわ。嬉しいし助かるけど、時々は「空」になって欲しいの。「お兄ちゃん」じゃなくて…。」
「……水菜、意味が分からないが?」
「…………もう!!」
この時はバシンと水菜に真は背中を叩かれていた。
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