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「ただいまー。空、ごめんね?大丈夫だった?」
玄関を開けたら、お母さんが10歩も歩いたらドアがあって、直ぐお部屋がひとつあるだけのおうち。
先月お泊りしたホテルだと思っていたから安心していたのに…と空は少しブータレながら帰って来た母の方を振り返った。
数冊の本を積み上げて机代わりに作文を書いていた。
妹の真夏は横でお昼寝中だった。
「お母さん!ここどこ?おうち帰ろう?」
「お母さんは帰らないよ?空がどうしても帰りたいなら送って行く。でも…ごめんね?お母さんは帰れない。お父さんと一緒にいられない。ごめんね?どっちにいたいかは空が決めていいから、今日はお母さんと居てくれないかな?もう遅くなるし…ね?」
真剣な水菜の声に空は黙って頷いた。
水菜が買って来たお弁当を食べて、持って来た長い座布団を布団代わりに3人で毛布に包まって寝る。
電気、ガス、エアコンも付いてて部屋は暖かだった。
子供達のことを考えて、家具家電付きのウィークリーマンションを急いで借りた。
水菜一人ならもっと安いアパートでも良かったが、子供を連れて電気やガス、水道、家電を揃えるのは大変だと考えた。
夫で勤め先の会社の社長、七瀬 真の所に帰る気は水菜にはなかった。
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