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「ど馬鹿……自社の社長にど馬鹿って……。」
置いていかれたマリンの社員証を見つめ、大きく息を吐く。
「はぁぁぁぁぁ〜〜。水菜がそんなに怒ってるなんて思わなかったし…アメリカ案件で英語出来る奴、窓口に置きたかったし…倉田休みに入るし…水菜も新人教育に集中出来ていいと思ったんだけどなぁ…。」
水菜にとって良いと思った事が裏目に出ていると梨香の言葉で気付いて、真は大きく項垂れていた。
(親権は渡さない?空は自分で決めさせる?子供達がバラバラになるなんて…可哀想だろう?俺は全員引き取るぞ!そうなると裁判?水菜と?水菜と争うのか?冗談だろ?負けるに決まってるじゃないか…。子供達取って泣かれたら敗北…子供達取られたら俺が泣く。水菜いなくなったらもっと泣く…。ちっくしょ〜、何が駄目なんだぁ!!)
机に伏せたままバタバタと動いた。
コンコン、とノックの音がして顔を上げるとドアを開けて立花 幸人が顔を出した。
幸人は高校からの親友で幼馴染の梨香の旦那で、この会社を一緒に立ち上げたメンバーで現副社長、営業を全て担っている男だ。
「真、これアメリカ企業の業績とかそういう書類。沢田さん?仕事早いね。正社員でも良いくらいだよ。」
「どうだった?」
「あぁ、金払い良いみたいだし契約さえちゃんとしてればメールのみの連絡でも大丈夫じゃないかな?電話も通じたしね。」
「ふうん…。沢田は?」
「アメリカと直接窓口だからね。出勤時間はずらしたよ。帰り遅いか朝早いかだね。昼間は休みだ。正社員考えたらどう?」
机の上に少し寄り掛かり、書類をポンと置いて話す。
「いや…今回のみだ。破格の給料を払ってこの仕事が終わり次第、辞めさせて欲しい。」
「何だよ。真が入れたんだろ?珍しいじゃないか?元セフレとは言え、彼女はキチンとしてたし綺麗に別れただろ?」
「幸人……水菜が会社を休んでいる事に気付いてないのか?」
頭を抱えて真が言うと幸人もそう言えばと答えた。
「梨香がなんか言ってたな?ほら、俺、出張で昨日の夕方戻ったからさ。」
「………事故があってな?間違いがあって…水菜は家出中なんだ。梨香が言うには元セフレが同じ会社にいるのは面白くないらしい…。」
「ああ…まぁ、そうだろうね?でも石原さん、そういうとこ割り切りそうなのにな…。あぁ、そうか。そうだよな……ていうか…そうだったな?」
一人で納得する幸人に真はイラッとする。
「何だよ!!言えよ!スパッと!」
思わず怒鳴る。
「ああ?だから、出張から帰ってさ、昨日?昼かな?駅前のスーパーで石原さんに似た人見たからさ。でも働いている訳ないし見間違いって思ったけど…それ……。」
顎で机のパソコン前の封筒を指す。
「それあるならさ、有休消化でその間に稼いでるのかなって思ったわけ!三人子供いるし稼げる時にね?」
言うだけ言って立ち上がり、出て行こうとする幸人を大きな声で呼び止めた。
「待てぃ!!何処のスーパーだ!!有休消化などさせるか!」
幸人はやれやれという顔を見せた。
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