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翌日、約束通り水菜は出勤した。
社長室からこっそりとそれを見て、真はホッと胸を撫で下ろした。
(取り敢えずチャンスはある。水菜が冷静になったら話しをして誤解を解いて…帰って来てもらうんだ。)
コツコツと階段を上がる音が聴こえて、知らない顔で椅子に座った。
キーボードを叩き、仕事をしている振りをした。
「…おはようございます。本日のスケジュールを確認致します。」
水菜が言い、一歩後ろへ下がると新人がスケジュールを読み上げた。
倉田と水菜が新人、佐藤の両側に立ちフォローしながらスケジュール確認を進めていく。
真は水菜だけを気付かれない様に集中して見ていた。
「え…っ、それから…あ、アメリカのえっと…。」
「G、forestです。」
佐藤が手帳を見ながら停止すると、水菜が横から口を出した。
「あ、はい。その、G、forestですが、昨夜遅くに沢田さんが連絡を受けたそうです。今朝、帰る時に伝言を受け取りました。あ…これです。」
メモを机の上に置かれて目を通す。
「うん、分かった。サードさんのアプリ開発の窓口は水菜でいいのか?」
何気なく言った一言に水菜に睨まれる。
「……後一ヶ月で終わらせて頂ければそのままで…無理な場合は倉田に引き継いでおきます。本日は以上になります。失礼致します。」
にこりともせず、必要以上の言葉も発する事なく水菜は戻って行った。
「最初の頃と変わらんぞ…態度が…。」
出逢って相手にされてなかった頃、自分はどうしていたかを思い出そうとした。
(7年か…。)
考えながら仕事を続けた。
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