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次の日、水菜は幼稚園に空と真夏を送り届けていつもと同じ挨拶をして、もうすぐ一歳になる海を前抱っこして会社に出勤した。
いつもより早く出勤し、会社の保育所に海を預けて自分はそのまま会社のビルから外へ出た。
水菜の仕事は社長秘書、社長である夫のスケジュール管理やクレーム窓口など煩わしい面倒事をフォローする仕事だ。
秘書室長の今川 (立花)梨香にメールを入れて有給休暇を申請した。
分かっているという内容のメールが返信されて来た。
ーーー
『有休溜まってるし倉田さんも休み前に新人鍛えてくれてるから気にしなくていいよ。何か困った事あったら手伝うよ?いつでも言ってね。』
ーーー
ありがとうと返信して、生活に必要な物を揃えに行く。
それから仕事を探しにハローワークに顔を出した。
子供がいるので15時まで、取り敢えずはパートでも良いが出来れば正社員。
職種に拘りはない、特に特筆した物もないのでどんな職種でも頑張ります…と熱意を伝えた。
お子さん預けるとこは決まってます?と聞かれて答えに困る。
子供は最近では結構な地位に認められているが、それは上の人間が決めている事で優遇されていても現場で優遇はされないのが現実だ。
「……子供3人いるときついな……。やっぱり…養育費に掛けるかぁ。」
取るものは取らねば…と固く決心した。
その頃、真は不機嫌増し増しのオーラ全開でキーを叩いていた。
「失礼します。コーヒーをお持ちしました。」
倉田 芳佳と新人で入ったばかりの佐藤 響子は朝のスケジュール確認を終えて、社長のコーヒーの要求に応えてコーヒーを持って来た所だ。
「…水菜は?」
「今日はお休みと…今川室長にお聞きしました。」
「休み?」
「……はい。社長?お聞きではないのですか?」
倉田 芳佳はすっかり水菜に似て来て、社長を怖がる素振りはなく遠慮なく物を言う。
「聞いてない!いいよ、後で電話する。下がっていい。」
不機嫌な社長に対して、それ以上聞かない事も秘書として水菜に習った。
一礼して倉田は静かに階段を降りて行った。
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