笑顔

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「取り敢えず…ミーティングルームに行こう?横になろう。私とミーティング…みんなにはそう話す。行こう。身体が冷えてしまうわ。」 梨香は水菜の身体を支えてミーティングルームに連れて行った。 途中、幸人に会うと小さな声で話した。 「発作ぽい…私とミーティングて事でよろしく。真には言わないでね?言ったら離婚!」 梨香に言われて幸人も苦笑した。 「了解!酷いようなら教えて?」 「分かった。」 二人がミーティングルームに入るのを見送ると、幸人は呟く。 「教えてやりたいんだけどなぁ…離婚て言われるとなぁ…。梨香には頭が上がんないしなぁ…。」 と独り言を呟いて、秘書室に入って行った。 椅子を繋げて置き、そこに梨香は水菜を寝かせた。 「病院、行ったって言ってたよね?先生はなんて?」 「軽いから薬を飲むほどじゃないって。気持ちを強く、楽に持って…違う事を考えましょうって。」 「……それさ…何気に難しい事をさらっと言われてるよね?」 梨香に言われて水菜もくすりと笑う。 「梨香にそう言われると気持ちが楽になるわ。」 笑顔で言う水菜に梨香も安心するが、額に置かれた指は小刻みに震えている事に気付いていた。 「今日はもう帰る?無理はしない方がいい。」 「ううん…。仕様が変更になったの。説明するつもりだったけど喧嘩しちゃったから…書面にしないと…。」 「…分かった。水菜のノーパソ持って来る。データで飛ばしてすぐ帰ればいい。ここにいて?持って来るから。ついでに自分の仕事もね。」 そう言い梨香は部屋から出て行った。 (真は…私が上野さんと浮気してると思っているのかな?) そう考えると悲しくなった。 (そうか……真も…悲しいのかな。疑っている訳じゃないんだけどな…。真が本気で好きならそれは仕方ないって思うだけで…。) 今回の事で水菜は気が付いた事があった。 真は付き合い始めの頃、水菜が見える場所にいないとダメだと良く言っていた。 ーー「水菜依存症だ!足りない!見えるとこにいて!」 笑っていたけど、7年の結婚生活で水菜も真の事は笑えなくなっていた。 真依存症…真が居れば笑えたし、仕事の悩みも育児の悩みも…馬鹿みたいに単純に簡単に解決してくれた。 悩んでいるのが馬鹿みたいに思える程、いつも気持ちを楽にしてくれた。 あのシーンを見た瞬間、自分のいる場所が実は簡単に崩れてしまう場所なのだと思わせられた。 真が一言、水菜は要らないと言えばそれで終わってしまう。 それに気が付いた時、真に依存している自分にも気が付いて失う事が怖くなった。 予行練習をしたくなったのだ。 子供達の為にも真に要らないと言われた時、一人でしっかりと立っていられる様にしておきたかった。 それもあって家を出ていた。
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