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印刷を画面上でクリックして背もたれに身体を預けた。
「水菜?辛い?」
「あ、ううん、終わったとこ。ありがとう、心配してくれて。」
微笑むと梨香も微笑み返して、目をパソコンに戻した。
真のキスシーンを見た後、動揺を抑えながら水菜は海を引き取りに行き、エレベーターに乗った。
降りるとその場に立ち尽くしてしまっていた。
頭では寝惚けていたというのも分かったし理解したが、気持ちが追い付かない。
時計を見て海を見つめる。
足が動いてくれず、かたかたと小さく指が震えている事に気が付くと怖さが込み上げた。
(……発作?数年出てないのに?今?どうしよう…。)
ゆっくりと足を出し、エレベーターから降りるとその場に停止した。
頭が真っ白でなにも考えられないでいると、エレベーターホールに明るい声が聞こえた。
「水菜?倉田さんにお祝い持って来て子供達連れて来たけど……メールそこで見たの、返信したけど…水菜…どうかしたの?」
エレベーター前で立ち尽くす水菜の様子に梨香も心配して聞いた。
「り…梨香……梨香ぁ………。」
梨香の顔を見ると同時に張り詰めた糸がプツリと切れた。
梨香は休みだったが、子供達を保育園に迎えに行き、空達がお母さんはと言うので、倉田への祝いも兼ねて連れて来たのだと話してくれた。
水菜を落ち着かせようと肩を摩りながら、話してくれる。
子供の事を聞いていたら水菜も自然と落ち着いて行く。
「水菜、帰ろう?」
梨香に言われてゲートを通過しようと社員証を出すと、子供達の事が頭に浮かんだ。
「梨香…空と真夏は?幸奈ちゃんに秀人君は?」
「大丈夫、幸人といる。外で車の中、一時駐車中だから…。幸人帰るから一緒に帰ろ?」
社員証を当ててゲートを通り、ロビーで水菜は停止した。
何かを少し考えて上を向いた。
「梨香、もう少し預けていいかな?6時には迎えに行くから…。上の二人、お願いしたら駄目?」
「いいけど…帰らないの?具合…悪いんじゃないの?」
「行きたいとこがあるの。あのね…。」
ロビーから出ずに出口付近で立ったまま小さな声で、今、上であった出来事を梨香に話した。
「はぁ?金髪……。」
声が大きくなった梨香の口を咄嗟に塞ぐ。
「しー。病院…行って来たいし…今日、真、帰って来ると思うけど…逃げ場を用意しておきたい。」
「真からの?」
梨香の問いにコクリと頷いた。
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