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「…ちきしょ…相変わらずクールで笑わない…言いたい事言うし…睨むし…クッソ!!…可愛いなぁ、いくつになっても…。」
小さな声で頭を抱えながら呟いて、真は水菜が降りた階段方向を上目で見る。
「何でこんな事になったかなぁ……。」
ついこの間、水菜と海の1歳の誕生日をどう祝おうか話したばかりだ。
真夏の誕生日が6月5日でお祝いして、次は海だねと話していた。
どんなに忙しくても、家族の誕生日だけは家に帰っていた。
(ついこの間なのに…あれだけの事で、なんでだ?誤解なんだけどなぁ……。あれ?誤解……?)
考えながら引っ掛かる気がした。
暫く頭を悩ませたが、考えれば考える程分からなくなるのが人と言える。
ごちゃごちゃして来て頭を抱えた。
空と真夏にはそろそろ1週間会えてない。
これだけ会えなくても泣きそうになるのに、離婚して離れて暮らすなんて事が出来るとも思えなかった。
トボトボと部屋を出て、託児所に向かった。
海の顔を、会えない上の二人の代わりではないがせめて見たい。
窓から覗いて、保育士と目が合うと出て来てくれる。
「七瀬さん?どうかされましたか?何か忘れ物ですか?」
急な言葉に驚いて否定する。
「いや!違います。海…どんな様子かなって思いまして…。」
保育士は不思議な表情を浮かべて、
「先程、奥様が引き取りにお見えですよ?お帰りになりましたけど…。」
と、真の顔を見て言った。
「水菜が?先程って具体的に何分前?」
詰め寄ってしまう。
「え、あ…えっと10分経ってないと思いますけど?」
「どうも!」
急いでエレベーターに向かう。
エレベーターはせわしなく動いていて、まだこの階に止まりそうにない。
大きなため息をついて肩を落とす。
戻ろうとすると後ろでエレベーターの到着音が聞こえて振り返る。
「あら。真、私のお出迎え?嬉しいわ。」
今にも胸の谷間が見えそうな、体のラインを強調したきちきちのスーツを着て沢田マリンが降りて来た。
「迎えじゃねぇ…。」
と言いながら戻ろうと歩き出すと、後ろから駆け寄り腕を絡ませてくる。
「…止めろ!今すぐ離せ!」
「お言葉ね?今朝早かったのに真に話をする為にわざわざ来たのよ?契約纏まりそうよ?」
「その話は部屋で聞く。手は離せ!」
「分かったわよ。照れ屋なのね?」
ふふっとマリンが笑う。
横に居て笑って欲しいのは水菜なのにな…と思うとまたため息が出た。
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