会わせて。

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「それにしても良く知ってるわね?沢田さんの事。お話しする機会あったの?」 詳しい情報に感心しながら訊き返す。 「いいえ、私の情報じゃありません。大学情報は今川室長からです。簡単な経歴ですか?あれを見たそうです。離婚の事はパート主婦の皆さまが…。最初にフロアに来た日に話されたそうですよ。沢田さんの机、フロアの端を使ってますから、出勤と退社入れ違いですけど時々顔は合わせるみたいです。」 「仲がいいのはいい事だけど、余り突っ込んで聞かない様にね?個人的な事だから…。さて…新しい仕様書を書こうかな…。」 席に座りパソコンを開けると、秘書室のドアがノックされてコーヒーを乗せたお盆を持ち、佐藤 響子が入って来た。 「社長はまだコーヒーの時間じゃないし、確認も30分後よ?」 倉田がそれを見て言うと佐藤も困った様に笑う。 「実は…それを忘れてコーヒーを入れてしまいまして…。飲みませんか?駄目ですか?」 お盆に載せられた三人分のコーヒーを水菜も見た。 「戴くわ。折角だから…。あ、牛乳って…なかったかな?」 その声にホッとして佐藤は答える。 「あります!出しますね。」 秘書室の中にある小さな冷蔵庫を開けると、となりの秘書室のドアが開く。 「私がもらうわ!水菜の分…いいよね?水菜は牛乳で…。」 勢い良く出て来た梨香が言う。 「え?じゃあ…すぐ入れて来ます。」 「入れてまで要らない!これでいい!水菜良いよね?」 座っている水菜に勢いよく梨香が言う。 「…い、良いけど…。………どうしたの?」 小声で聴くと耳元で囁かれる。 「分からないんでしょ?来たの?」 「……まだ。」 「じゃあ、あんまり良くないでしょ?初期にカフェイン。水菜前科あるんだから…。」 「…………そうね。」 (前科って…犯罪者みたいに言われた…。) と考えながらも、目の前の梨香は有り難い存在で水菜はくすくすと笑った。
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