会わせて。

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「ゲームが小さく単純なものになるからと言って、システム事態が単純になるという訳ではないというのは、私もこの説明で理解しました。 ですから、一からのやり直しで同じ納期というのは無理があると上野さんにも伝えました。これで引き受けてくれるなら納期日を延ばすよう交渉して下さるそうです。」 水菜から上野って名前が出ると、ピクリと眉が上がる。 気に入らないのだと自分でも気付く。 そこに気付くと、幸人がさっき言ってた、 ーー「マリンと呼ぶのもアウト!」 を思い出す。 (確かにアウトだな。上野がアウトなんだから沢田でもアウトだな。これが言いたかったのか幸人は…。) コミュニケーション能力が低く、人付き合いは苦手。 水菜と結婚してだいぶ慣れて来たつもりだけど、まだまだだと思う。 子供達の為、水菜の為、会社はどうでもいいと、もう言えない。 独身の時みたいに、ダメなら潰してまた作ろうぜ?なんて軽口は言えない。 幸人が言うようにアメリカの企業との初仕事は願ってもない好機だ。 「納期が延びるなら受けるよ。一度は受けた仕事だしな?出来ないから逃げたと思われたくないし…。」 顔を上げて言うと安心した水菜の顔が目に入る。 「良かったです。でも無理はなさらない様に…。納期は出来るだけ延ばして頂く様、交渉致します。早速、お返事して参ります。」 行こうとする水菜の手を慌てて立ち上がり掴んだ。 机の向こう側、停止して水菜が振り返る。 「五分!五分、プライベートな時間をくれ。」 上野も我慢した、無理な仕事も引き受けた…頼むからという気持ちで言った。 「…はい。」 静かに返事をして机の前に立ってくれた。 「ありがとう!」 (水菜〜!ヒャッホーウ!!) 久しぶりな素直な水菜に、真は舞い上がる気分だった。
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