お父さんのばか。

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ドアが向こうから開いて、真が空を抱き上げた。 「空!良く来た!元気だったか?真夏〜!おいで。」 空を下ろして今度は真夏を抱き上げ、空とも手を繋いで部屋に招き入れた。 「水菜、少しソファで待ってて?」 「ええ…。」 微笑んで部屋に足を踏み入れた瞬間、真の机の椅子の横に…もう一つ椅子を置いて座っている女性の姿が目に入った。 後ろで真がドアを閉める音が遠くに聞こえる気がした。 「これからアメリカの社長から電話があるんだ。急な予定で…ごめんな?すぐ終わるから、少し待っててな?」 空に話し、二人の子の頭を撫でて真は机の椅子に戻る。 「……仕事、ですか?」 立ち尽くしたまま、水菜は聞いた。 「G、forestの社長がこちらの時間に合わせて電話して来る事になってね。日常会話は出来るけど専門の用語が出ると困るから、一応打ち合わせしてた。もうすぐ電話があるから、すぐ終わる。ごめんな?水菜。」 無言で首を振ると、沢田が口を開く。 「ごめんなさいね?久し振りの家族団欒でしょう?お子さん可愛いわね。空くんで、真夏ちゃん?よろしくね?沢田 マリンです。そちらはかい、くん?でしたよね?」 水菜の方を向いて、腕に抱いている海を見て言う。 「……ええ。」 「真が三人の子の父親なんてびっくりしました。」 「いいだろう?それよりマ…沢田さん、これ訳してくれる?」 「どれ?」 「これ、ここ。」 隣同士に座りながら、顔を寄せて書類を二人で見つめて話す姿を見て、水菜は二人の子を自分の側に呼び寄せた。 膝を突いて言い聞かせる。 「お仕事のお電話終わるまで静かにしていようね?終わったらお父さん遊んでくれるから…。」 「お母さん?」 不意に空に呼ばれて返事をする。 「ん?」 「……だいじょうぶ?」 不安な顔をしているのだろうか? このモヤモヤした気持ちが顔に出ているのかと考えて、笑顔を作った。 「大丈夫だよ?少し待っていようね?」 水菜が答えた瞬間に電話が鳴った。 英語を話す真の声が遠くに聴こえた。 横に座りながらサポートする沢田の声が真横で聴こえる気がした。 (仕事だわ…なんか…モヤモヤする。) 気持ちの悪さだけを感じていた。
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