お父さんのばか。

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電話を切ると真は契約成功だ、と沢田と握手をした。 すぐに椅子から立ち上がり、子供達の方に歩いて来た。 「よし!お待たせ!空、真夏、良い子だったぞ?」 沢田も出て来て真夏を抱き上げる。 「真夏ちゃん、奥様そっくりですね?ミニチュアみたいだわ。」 話しながら真夏を下ろし、水菜が抱いている海を見る。 「そちらは真そっくりね?真のミニチュアみたい。抱かせて頂いても?」 水菜は躊躇して真に助けの眼差しを向けたが、真は呆気なく自慢した。 「俺そっくりだろ?すげー可愛いだろ?」 手を伸ばされて海を取り上げられる。 「ほんと!すごい可愛い!!かい、ってどういう字なの?」 「あぁ、「うみ」って書くんだ。「かい」な?」 「あら?私と同じ名前じゃない?マリンは海だもの。真が付けたの?」 「そうだよ?」 「わざと?私の事、忘れない様に?」 「なわけないだろ!偶然!!」 少し離れた所で自分が産んだ三人の子が、自分の夫が…ほかの女性と楽しそうにしているのを水菜はボーッと見ていた。 体が動いてくれなかった。 そんなはずはないと確信しているのに、好きな人の名前を付けたのかと信じてしまいそうになる程…「家族」に見えた。 「今日は家族でお食事なのよね?良いわね?こんな可愛い子達とご飯か。」 「いいだろう?」 「お母さん?」 いつの間にか空が足元に来ていた。 膝を突いて空に言う。 「お母さんね……御用があるの。……お父さんとあのお姉さんとご飯に行って?終わったらお迎えに来るから、お父さんの言う事聞いてね?海はお母さんが連れて行くから、真夏をお願いね?」 空は不思議そうな顔をして、それを聞いた真も驚いて口を出そうとすると、沢田が大きく声を出した。 「あら。じゃあ…海くんも私が見てましょうか?お子さん連れて行くの大変でしょう?真にそっくりで嬉しいし…真夏ちゃんの方が大変な感じするけど、お兄ちゃんいるから大丈夫ですよ?」 (真夏が私にそっくりだから面倒はみたくないって事?) それを言われて始めて水菜は沢田にキツイ目を向けた。
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