お父さんのばか。

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「お父さんのばか!!」 「……は?」 突然に聞こえた大きな声にきょとんして下に目を向けると、空が小さな身体全体で真に怒りを向けていた。 膝を突いて空と目線を合わせる。 「空…馬鹿って…。」 「ばかだもん!お母さん…楽しみにしてた。」 泣き出しそうな顔をして、下を向いた空を抱きしめて聞く。 「楽しみにしてた?」 「してた……きの、う…お父さんと、ご飯だよって……。おか、お母さん…さっき、泣きそうだった。」 それを聞いて真は自分の馬鹿を呪う。 「空、行くぞ!沢田、悪いけど出る、出て!社長室は立ち入り禁止。」 沢田を追い出して、真夏を抱き上げ空と手を繋ぐ。 「ちょっと真!どこ行くのよ?」 「水菜追いかける!休みまで仕事お疲れ様!システム出来上がるまで契約延長で手続きしておくし給料も上げる。あと一か月、その間に他の仕事面接行くなら有休扱いにする。それで不満があるならあとは副社長と話し合ってくれ。じゃあな!」 階段をゆっくり降りながら言い、沢田を残し、真は水菜を追いかけた。 エレベーターホールから携帯にかけるが電話には出ない。 エレベーターに乗る。 「どこ行ったかな?空、今のお家の場所分かるか?」 「うんと…おっきなスーパーがある。」 「おっきなスーパー?水菜がバイトしてたあれかな?」 地下まで降りて念のため警備員室に声をかける。 「お疲れ様です。すみません、女性通りませんでしたか?」 「お疲れ様です。エタエモの石原さんの事ですか?」 警備員から名前が出て少し驚くが、自分もエタエモで子供を連れているからか、と気付く。 「そうです。ご存知ですか?」 「ここにしばらくお住みだったし、ここ通る度に挨拶してくれるし、会社に差し入れするからって私達も時々頂いて…お裾分けだって。気さくに話して下さるから…。あ、入って行く時挨拶して、帰りはここ通ってませんよ?出口は…今日はここだけのはずですけど…。」 「すみません!ありがとうございます!」 頭を下げて、真はUターンする。 住人以外は休日に正面玄関は開けられない。 エレベーターを待ち、乗り込むと不安そうな顔の空に話し掛けた。 「大丈夫!出てないなら何処にいるか分かったから。お母さんのとこに行こうな?」 繋いでいた空の手に力が込められた。
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