依存

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息を切らして真が水菜の名前を呼ぶ。 立ち上がると、空は先に走り出して来る。 水菜も膝を突いて空を抱き留めた。 「……どうしたの?空…ご飯は?」 涙を拭いて聞くと空は怒った顔で水菜を見る。 「お母さん行かないから!ぼくもいや!」 真夏を抱いたまま、真も目の前に来て水菜に向かい言う。 「真夏も空もお母さんと一緒がいいって…。俺もね?水菜…震えてる…。もしかしてあれ?…いや…でもな?もう何年も出てないし…。」 言いながら水菜の顔を見て真は気が付く。 何年も出てない症状が出る様な事が、最近あったという事…それを仕出かしたのが自分だという事だ。 ーー「何を誤解したらそう見えるのか、言いたい言葉を飲み込みました。」 頭の中にいつか聞いた水菜のトラウマの説明が浮かんだ。 ーー「私、誤解って言葉嫌い。」 そう話されたのも思い出した。 水菜が辛くなる言葉を言っていた事に、自分を殴りたくなった。 「……水菜、なんで話してくれなかった?」 「心配かけるし…真は若い男性と私が消えた方が良いのかなって思ったし…その方が昔から好きだった人と……よりが戻せるでしょ?」 プイと窓の方を向いてそれだけを言い、水菜はベンチに座る。 空も座らせて、窓の外を見ていた。 真夏を座らせて、真も真夏の隣に座る。 「水菜?俺に昔から好きな人、いるとしたら水菜だよ?アメリカ案件は英語だし向こうに住んでた沢田は適任だと思った。水菜の仕事が楽になると考えた。でも…ごめん!嫌に決まってるよな?暫くは続けてもらうけど、早目に辞めてもらうから…若い男って言ったのはさ、俺の完全なヤキモチ!だってさ、あいつ…水菜がタイプだって飲み会で言ってたし…だから気をつけてって、ついさ……。ごめんなさい!殴っていいし怒っていいし…許さなくていいから帰って来て欲しい。」 そんなに嫌だとは思わなかった…と真は言い、思いっきり頭を下げていた。 「あれは…真は…悪くない。それは分かってるよ?私の頭がね、勝手に続きを想像してしまうの。凄く綺麗でスタイル良くて頭も良くて…真の隣にはあんな女性が似合うって思うの。それでね、気付いたの。」 ポツリと話す水菜を見ると綺麗な横顔。 「何に…気付いたの?」 静かに訊き返す。 「私、結婚生活の間にいつの間にか真を頼り過ぎてる。真がいたら発作も出ない悩みもない、幸せで依存してる。真にいらないって言われたら一人で生きていけないの。駄目よね?直ぐ症状が出て……情けない。」 小さく息を吐いて、水菜は真を見て微笑んだ。
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