水菜の気持ち

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「今日だって一緒にいたのを見ただけで具合、悪くなったんだろ?時間差があるとはいえ、これからも打ち合わせはあるし話をしない訳にはいかない。その度に水菜が辛くなるのは嫌だよ?」 考える顔をして下を向き、少し時間を空けて水菜は答えた。 「………私の所為で、仕事ができる人を辞めさせるのも嫌だわ。真…私ね?真を信じようと思うの。逃げないで自分の心と戦おうと思う。自分の為と子供達の為に強い母親になりたい。いつまでもいつか真に嫌われると考えながら震えるのは嫌なの。ガラスで出来たハートは嫌なの。すぐに破れてしまう心じゃ子供達を守れない。」 少し間があった事を変に思いながらも真は訊き返した。 「だから、沢田はそのままにしろって事?なぁ、水菜、ガラスの心の何がいけない?弱い人は優しいって事だぞ?俺はそういう水菜の事、大好きだし…。」 「じゃあ…強くなったら嫌い?」 悪戯っぽく水菜が聞くと真は急いで訂正する。 「そんな訳ないだろ?会社じゃ笑わないし、冷たいし…ガラスの心というよりは鉄の心の持ち主じゃないか。」 「ひどっ…。」 笑う水菜の頬に触れる。 「水菜の好きにして良いよ?戦いたいならそうしたらいい。鉄の心でもガラスの心でも、水菜の心が優しい事に変わりはないし水菜を好きな事に変わりもない。具合が悪い時は教えて欲しい。一人で苦しまないで欲しい。どんなに大変でも時間が掛かっても側にいたいって……昔、俺言ったよ?」 「……うん、真…ごめんね?疑って…。」 「謝るなよ?俺が悪いんだ。ごめん、沢田、雇って…。昔から俺は変わらないんだな。鈍感でバカで考えなし…水菜のトラウマの事もすっかり忘れてて、幸人も梨香も気付いてたんだなって…今頃分かった。俺…本当、馬鹿!」 「でも…そういう真に助けられてるから憎めないのよ?真の良いとこでもあるのよ?真っ直ぐで単純で…。」 「褒めてる?」 「一応……。」 ただ手を繋いで並んで座って、ずっといろんな話をしていた。 水菜が隣で笑う。 当たり前になっていて忘れていた事。 忘れていた一番大事で、一番望んでいた事を真は思い出していた。
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