水菜の気持ち

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「水菜。嫌かもしれないけど…いや!絶対嫌だと思うけど聞いてくれるか?」 水菜の方に体を向けて、真剣な顔で言う。 何を話そうとしているか水菜は理解して頷いた。 深呼吸してから、小さな声で水菜を真っ直ぐに見て話し始めた。 「…沢田 マリンね?……もう気付いてると思うけど昔のセフレ、水菜と出会う前の事だ。父親が結構お金持ちで、大学出て就職して半年経たずに辞めたんだ。それからは父親の金で遊び回ってた。その時に知り合った。水菜も知ってる通り、その頃の俺は最低で…仕事の邪魔になる女性とは直ぐに別れてた。彼女は楽だった。親が離婚で揉めてて家には帰りたくないと言うから暫く泊めてた。母親とアメリカに行く事になって最後に握手をして別れた。今までありがとう、元気で。日本に来る事があって何か困ったらいつでも来ていい…そう話したと思う。」 「……うん。それを彼女は覚えていて来たのね?」 「うん…多分ね…平気?」 水菜の手をぎゅっと握りしめて、様子を見ながらポツリと真は聞いた。 「平気よ?」 微笑みながら答えると、真もホッとした表情を見せる。 「…水菜は俺に嫌われるかもって言ったけど、俺の方が水菜に嫌われたらって結婚してからずっと思ってる。水菜と出会う前の俺はいい加減でどうしようもない奴だから。今も…仕事に熱中するとそれしか頭は回らないし、水菜の病気の事も…あんなに理解したつもりでいて綺麗に忘れてた。イライラしたら解消でセフレ呼び出して、その頃の罰を受けてる。それに水菜を巻き込んでる。水菜が苦しんでいるのは俺といるからだろ?他の奴なら、上野ならもっと笑顔で暮らせるのかなって考えると…余計イライラするし、そんなの嫌だし…。」 頭を抱えながら、泣きそうな声を真が出した。 ーー「水菜が苦しんでいるのは俺といるから」 それは自分も同じだと水菜は考えながら聞いていた。 相手が自分でなければ、真はもっと自由に伸び伸びと仕事が出来るのではないか…家庭の事も妻の事も考えずに…もっと自由に……。 真の足を引っ張っている気がしていた。
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