水菜の気持ち

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「ねぇ?私を…イライラしながら抱いてるの?」 水菜の突然の発言に驚いて顔を向けた。 笑顔の水菜が真を見ていた。 「ん…な訳ない!水菜に触れる時は、いや、その前にイライラしてても!水菜に触れた瞬間に俺は優しくなれる!本当だよ?嘘じゃない!」 言い訳する様に慌てて言うと、水菜は笑いながら聞いていて返事をすぐにした。 「分かってる。過去は変わらないし仕方ないと思ってる。あの頃、自分に向けられる好意が怖くて一人が良かった。その私に恋愛を勧めたのは真よ?真だから…恋をしようと思えた。真だからよ?他の人じゃ駄目だったと思う。今も同じよ?上野さんは良い人だけど仕事だから、ただそれだけ。真も沢田さんがそうなら、それでいいわ。ひとつだけ、お願いがある。」 「何?何でも言って?」 水菜の方を向き、両手を取り訊き返す。 「ちゃんと言葉で言って?嘘は付かないで…。沢田 マリンさんの事、今も好きですか?私より……本当は愛してますか?」 泣きそうな顔で水菜が聞くと真は水菜を抱きしめる。 「沢田マリンは過去の人で過去でも愛はなかった。俺が好きなのは石原 水菜さんです。愛しているのは……七瀬 水菜です。俺の奥さんです。側にいて?水菜…愛してるから…一緒にいて?冷たくても酷い事言ってもいいから…。」 「…私、そんなに冷たくないと思うの。……真、ありがとう。」 耳元で水菜の不満気な声が聞こえて、顔を見ておでこを合わせて二人で笑った。 水菜が帰って来てくれた事に満足していたけど、水菜の妙にあいた「間」にはまだ言えなかった言葉があったんだと、後に知る事になり、また自分の馬鹿を呪う羽目になる事は………この時は知らなかった。 「それで…ミニゲーム出来そう?」 と聞かれて真は首を振った。 「えっ?納期もっと延ばしてもらおうか?」 「嘘だよ。水菜が帰ってくれたからちゃんとやる。うん!出来る!ごめんな?本当に仕事夢中になると目が行かなくて…。」 「ううん…そういう真、嫌いじゃないし、仕事の事は尊敬してる。凄いっていつも思ってるよ?サポート出来てるか不安になるだけ…。」 「で……。」 「…で?」 で、と発した後、真が停止するので顔を見たまま水菜も停止した。 「で……出来てない訳ないだろう?水菜、自分の評価低いぞ?俺は水菜がいない間、水菜すげーって何回も思った。家事だけじゃなくて、仕事のフォローも水菜じゃないと駄目な事はいっぱいある!!この7年、普通に思ってて、だから側にいる事も当たり前になってた。ごめん!!水菜じゃなきゃ駄目だ!何度でも謝るし、言う!側にいてくれ、見えるとこに…水菜がいないと俺は駄目だ。お願いします。」 「真、分かったから…起きちゃう…よ……。」 「…ん、………んー?」 ベッドからの声に二人で振り向くと、体を起こした空がいて二人で慌てて寝かせに行った。
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