母心

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「真、案の定、どうして私が子供達を置いて帰ったか気付いてなかったらしいの。水菜は最初から子供達だけ置いて行く気だったのかなくらいでね。 空に言われたって…。お母さん、楽しみにしてた、泣きそうだったって。」 「さすが、宇宙馬鹿!子供の方が母親を見てるわね。」 コーヒーを飲み、呆れ顔で梨香が言う。 「出て行けって言われて準備して、鞄三つ持って、ベビーカーに海を乗せて、寝ている真夏を抱っこ紐で抱いて…空の部屋に空を起こしに行った。起きて、起きてくれないと抱いて連れて行けない。置いて行く事になる。だから起きてって…。考えたら酷い事しているわよね?空にしてみたら眠る前は普通だったのに、急に起こされて置いて行くよって言われるのだから。眠い目を擦って着いて来てくれたんだと思う。走り寄ってくる空の顔が…本当に必死で考えたら申し訳なくて…母親なのに…反省したわ。」 涙を堪えながら水菜は話していた。 「それだって原因は真じゃない!自分の所為で水菜が苦しんでいるのに気付きもしないで出て行けって…水菜が出て行けないって分かってて言ってるのよ?卑怯だわ。」 プン!と怒りながら梨香が言うと、水菜も同意してからため息を吐いた。 「私も意地で出ちゃったから…反省した。子供の為にも出て行けと言われて意地を張って出る様な母親じゃ駄目だわ。変な意地は捨ててそこに大きな顔で留まるか、基盤を準備して迎えに行くか…。「妻」なら意地で動くのもいいけど「母」は駄目だわ。発作が出そうになった時、海がいてここで倒れたらどうなるのって考えた。もっと…しっかりしないといけないと思った。」 強い目を水菜はしていた。 それを見て梨香も納得した言葉を出した。 「母か…。お互いに三人の子の母だものね?クソババァとか言われるまでは守らなきゃいけないのよね?秀人は4歳だから後…10年はあるかな?」 梨香には長女梨奈8歳、次女幸奈7歳、長男秀人4歳の三人の子がいる。 「でもさ?沢田さん、時々、夕方早目に来たりするよ?会っても平気?日曜日みたいにニアミスしない?真に二人きりにならない様に言っておいた方が良くない?あいつ…そういうとこ気が回らない宇宙馬鹿だよ?」 「考えたけど、仕事だしね。それにそういうのは自分で気が付かないといくら言っても忘れてしまうと思う。真を信じるって決めたんだから信じる。ただね?真には言えなかったけど…あの人…沢田さん。真ははっきりと否定してくれたけど、彼女はどうなのかなって…。」 不安そうな顔で水菜が言うと梨香は身を乗り出した。 「どうなのかな…って…それ、沢田さんが真を好きって事?」 驚いた様に水菜を見つめて聞いた。 「そういう風にしか…見えなかったの。彼女の…私に対する態度がね?敵意があるというか…。少し引っ掛かったの。」 まさか…と梨香は少し笑い…… 「ちょっと水菜?笑えないわ。」 と答えた。
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