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「当たり障りのない内容の様ですけど…。」
覗きながら倉田が言うと、水菜は顔を見上げて尊敬の目を向けた。
「分かるの?凄いわ。教えてもらえる?」
目を輝かせた水菜に倉田は恥ずかしそうに笑い答えた。
「全文は無理ですよ?最初の数行だけです。自己紹介と、契約して頂き光栄です、といった感じです。」
「社長に直接の挨拶メールという感じかしら。」
「その様ですね。どうします?初めての事ですよね?」
パソコン画面を二人でじっと見つめて、水菜は倉田の顔を見上げた。
「そうね?社長に確認して頂くのが一番確実ね。窓口の沢田さんに任せていいという事ならこのまま転送でいいでしょうし…。最初のメールだから確認しておくわ。対処が決まったら今後もその方向で…。社長の取り扱いメモに書いておくわね。」
「お願いします。佐藤はまだ、社長が怖いみたいで…。休みが取れるか心配だったんですけど、石原さんが戻ってくれて安心して旅行に行けます。」
自分の机に戻り、倉田は笑顔で椅子に座った。
「新婚旅行だもんね?結婚式も楽しみだわ。ゆっくり休んで楽しんで来てね?帰ったらバリバリ仕事してもらうから。」
「了解です!」
くすくす笑いながら二人でサクサク作業を続けた。
メールの振り分けを終えて、社長室に上がって行く。
「失礼致します。少しお時間宜しいでしょうか?」
階段を上がり切る前から、真の顔は水菜の方を向いていた。
「水菜、どうぞ。」
笑顔で言う。
(スーツ最高!!完璧!俺!)
今日の水菜のスーツは、「キス事件」のお詫びに真が強制的に買った物だ。
「G、forestの社長より社長宛にメールが届いておりました。社長の個人アドレスにです。これが簡単に訳した物です。初めての事ですので今後の対応もお聞きしたいのですが…窓口の沢田のアドレスに転送で良いでしょうか?」
日本語に訳してプリントアウトした用紙を机の上に出した。
真はそれを見て驚いた顔をした。
「水菜……英語、出来たんだ……。」
茫然と呟くと、
「…出来ません!」
はっきりと返事がされて、そのまま真は水菜の顔を見つめてしまっていた。
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