腹が立つんだけど。

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ふぅ…と相手に気付かれない様に小さく息を吐いてから話し始める。 「日本企業だからそう思われての事で、秘書の方へ…社長からの指示だと思います。言いたい事は分かりますが、電話の相手は担当者ですよね?あちらは社長自身のお名前でメールを下さっているのに、こちらは仕事次いでの電話で担当者に伝えてもらう、失礼になりませんか?社長の名前で…メールで返信をお願いします。」 要らないと机の上で押された日本語訳を押し返して、水菜は沢田の目を見て話した。 ふぅ…と小さく息を吐いて背の高い沢田は水菜を見下ろす形で口を開いた。 「石原さん。切りがないと言っているのが分からないの?外国の仕事振りなんて知らないでしょ?合理主義よ?時間の無駄はしないの。あなたに話しても意味がないわ。後で真に報告するからいいわ。もう帰って下さい。お子さん、三人もいらっしゃるでしょ?大変なのだし…いつまでも仕事しなくても良くないですか?」 カチン…と来た。 滅多に怒らない水菜もこれにはムッとした。 外国の事を知らない人間が口を出すなと言っている。 秘書に話しても意味がないと言われている。 社長の妻だから子供がいるから、仕事しなくてもいいと言われている。 (……悔しいけど…そうかもしれないけど……。) 水菜は下唇を噛んで耐えた。 それを沢田は上から目線で、ふふんという声が聴こえそうな顔で見ていた。 負けるかと言う気持ちで言い返す。 「社長への報告は私がします。私が受けたメールですから。沢田さんの言い分は分かりました。メールは結構です。後は社長に報告の上、こちらで対処致します。お時間を取らせて申し訳ありませんでした。」 日本語訳の用紙を手に取り、一礼してその場を離れた。 そのまま社長室に乗り込んだ。
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