英会話を始める。

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「そうだ!真、ごめん、くつろいでいる所申し訳ないけど、確認してくれる?」 リビングの奥に置いてある水菜専用の小さな机に行き、上に置いてあった用紙を一枚持って来て真に渡した。 「ああ、メール内容?」 「英文ね?苦労したわよ?」 くすくす笑いながら、水菜は椅子に座り直した。 「ミスタースティーブ、メールをありがとうございます。海外の企業との取引はこちらも初めてでやり方が違う事もあると思いますが……問題があればその都度、二社で話し合い、妥協し相談して会社の繁栄の為に協力し合える様、長いお付き合いをよろしくお願いします……か。」 「何処かおかしい?」 不安そうな顔で水菜は声に出して文章を読む真を見ていた。 「いいと思う。ただ、ネガティブな言葉は無い方がいいだろうな?妥協、これは削除。後はそのままでいいよ。」 「…妥協、ネガティブ?」 少し不思議顔で上目で見るから、真も力の抜けた顔になりながら答えた。 「妥協しなきゃ行けない、これはネガティブだね。」 「これは削除ね。じゃあ、今からメールしてくるわ。」 「今から?」 「今朝届いたメールだもの、早い方がいいわ。向こうは今頃仕事始まる時間でしょう?丁度いいじゃない。」 「一緒に寝ようと思ったのに!」 「ベッドには真夏が寝てるわよ?一緒に寝てあげて?」 くすくす言われて、仕方なく真も真夏と海を引き受ける事にした。 翌日、いつもの様に真の車で上の二人を保育園に送り、そのまま一緒に出勤した。 二人で海を託児所に預けて、真は相変わらずべったりで引き離す事に苦労する。 べったりな時ほど現実逃避していて、仕事が停止しているんだなという事がよく分かる。 真に喝と飴を与えて社長室に見送り、秘書室の自分の机に着いて、ノーパソを開けてから軽い掃除を始めた。 二つある机を拭いていると倉田が出勤して、床掃除を開始してくれた。 シートが付いている長い柄の道具で床を拭く。 電話機や通信機を拭いていると、「ピコン」という音が聞こえた。 (全部受信したわね。) 社長のアドレスに送られたメールを全部受信し終えると鳴る音で、社長のメールは大量で、中にはクレームもある。 「よし!コーヒーのセットを…」 「あ、して来ました。」 してくるわと言おうとして先に倉田に言われてお礼を言い、椅子に座った。 ノーパソの画面を素早く見ながら手を止めた。 「……お礼のお礼メール?」 沢田が言った事が当たりなのかと思うと、悔しさが込み上げた。 ーー「お礼のメールにお礼メールして、またお礼メールもらうおつもりですか?切りがありませんよ。」 (切りがない…こういう事?でも…向こうだって忙しい時間を割いてメールしてくれているのに無視するのは…。内容を確認してから真に報告しよう。) 悔しい気持ちを抱きながら、水菜は仕事を開始した。
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