英会話を始める。

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英和辞書にコピー、ペーストして訳してもらうと、時々、意味不明な文書が日本語化される。 その部分を辞書で引きながら、水菜は完璧な日本語訳にした。 丁寧なお礼のメール。 差し出し人は「G、forest」の社長、スティーブとなっているが、多分、自分と同じ秘書だろうと考えてお礼メールは大丈夫ですよ、とメールに添えて返信をした。 内容も全て真に報告をしていた。 次の日。 いつもと同じ様に出勤するとまた「G、forest」からメールが届いていた。 挨拶メールかと思うと、沢田のしてやったりの顔が浮かんで気分が悪かった。 スケジュール確認を先にして、ゆっくりと挨拶メールを日本語に訳した。 (これ…やってたら英語話せる様に……ならないわね?) 苦笑しながら訳す事を終えて、辞書を置いた。 「これ……秘書?社長本人?まさかね?」 訳したメールはもう社長宛ではなかった。 アドレスは間違いなく社長宛だが、宛名にはミス、イシハラと書いてあったからだ。 前回のメールに『社長の指示を受けてメールを出しています。秘書の石原と申します。社長は丁寧なメールを大変喜び、恐縮しております。』という一文を加えていた。 秘書が書いたメールならお礼メールはもう要らないと向こうの秘書が判断するだろうと考えての事だった。 ごちゃごちゃ考え込んでいると机の上の電話が鳴り、急いで取るとサードと名乗られたが担当者の上野ではなく、サードの制作部の人だった。 「おはようございます。サード担当窓口の石原と申します。本日、上野さんは?」 『上野じゃ埒が明かないから直接お電話させて頂きました。納期、延ばすの二度です。また延ばして欲しいってどういう事ですか?社長と直にお話したいのですが!』 少し怒り気味の声に水菜は深呼吸した。 「その件でしたら、一度目の延長は契約と違う事からですし、契約と違うアプリ制作に1か月経過してからの変更の上、同じ納期というのは明らかにおかしいです。二度目の変更は昨日お願い致しました。それでも最初の1か月を考えたらトータル2週間の延期です。その位は日数を戴いても良いかと思いますが…。」 冷静に落ち着いた口調で話した。 『困るんですよ!こちらは宣伝も終わってます!お金をかけてあのゲームのエタエモがミニゲームをサイトに作った!宣伝費も掛かってる。出来ないじゃ困るんですよ!社長に変わって下さい。進行状況を直接お聞きしたい。秘書の方ではなくて!!』 「お言葉ですが…窓口がいるのは制作の邪魔にならない様にです。調子良く制作しているのに電話です、来客ですと言っていたらもっと進まなくなってしまいます。納期より早く出来る様にこちらも…社長も勿論、精一杯励んでおります。8割出来ていると聞いております。どうか…もう暫く温かいお気持ちでお待ち頂けないでしょうか?きっとご満足戴ける素晴らしいアプリをお持ちいたしますので……どうか、宜しくお願い致します。」 『8割……本当ですか?』 「はい!うちの七瀬は社長である前に優秀なエンジニアですから。」 『分かりました。仕様変更で無理を言ったのはこちらですから、今回延ばした納期まで待ちます。ですが!これ以上は延ばせませんから!お願いしますよ!』 ガチャ…と電話を切られて水菜はため息を吐いて受話器を置いた。
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