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「石原さん、クレームですか?」
電話に耳を傾けていた倉田が心配そうに聞いた。
「ううん、例のミニアプリゲーム。納期延長をお願いしたから何処まで出来てるんだって…。」
「8割ですか?流石の社長も石原さんにはなんでも話すのですね。」
笑顔で仕事の手を止めて倉田は言う。
「ええ?仕事の事は言わないよ?はったりだよぉ?7割とか8割とか出来そうで出来なさそうな辺りを言っておくの。5割だとあと半分もあるの?半分作るのにこれだけ掛かってるし…って相手が計算しちゃうから、微妙な数字を言っておくの。安心するから…。」
しれっと水菜が口に手を当てて笑顔で言う。
「………い、いんですか?社長にばれたりしたら?」
社長秘書とはいえ、倉田はエンジニアとしての真の仕事のサポートまでは引き受けていない。
エンジニアとしての真は沢山の仕事を抱えて、出来ない時はイライラが凄まじいという理由からだった。
「だって進行状況なんてあってない様な物よ?気に入らないと消しちゃうし、出来る時は信じられない位のスピードで出来るしね?最終的に納期に間に合えばいいんだから、社長には今は集中してもらわないとね?。」
話してから水菜は上野の携帯に納期確認の電話を入れて、訳したメールを再度見つめた。
『ミス、イシハラ。
おはようございます。
私はG、forestの社長、スティーブです。本人です。
日本企業にわざわざシステム依頼をしたのは、日本人仕事の丁寧さと信頼性を考えての事でした。
私個人が日本が好きという事もあります。
日本語を勉強したいと考えますが、機会はありません。
あなたさえ良ければ、日本語も時々交えて、メール交換出来ませんか?
社長とお話ししたい気持ちも強いですが、お忙しいと思いますので。
そう言っては…あなたに失礼ですね。ごめんなさい。
ご検討ください。』
(……本人で当たり。日本語の勉強、日本贔屓?でも、日本語交えてメールって…どんなメールなの?)
取り敢えず返事は社長に報告してからの案件だと考えて、報告は帰りにする事にした。
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