英会話を始める。

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「失礼します。」 カタカタとキーボードを叩く音だけが響く社長室に上がって挨拶をした。 暫くその場で待つと、顔を上げて水菜の顔を見る。 笑顔で名前を呼んでくれる。 「水菜!いいよ?帰る時間?」 それを聞いてから机の前まで歩いて行く。 「はい。その前に報告が二点。サードの制作部の方から直接お電話がありました。社長に直に進行状況をお聞きしたいと…お断りして8割終わっているとお答えしました。納期日は昨日、延ばして頂いた日で良いそうです。 それから、G、forestからメールがありました。 内容はこちらになります。社長さえ宜しければお受けしようと、仕事にはあまり関係のない内容になりそうですから、受ける必要性はないと思われますが、良好な関係性を築く上で微力ながらお力になれたらと考えました。」 「うん……いいと思う。けど、英語で来るんだぞ?水菜、大変じゃないか?」 「私も個人的に勉強になりますし、空も英会話いくから…負けられないと言いますか……。」 水菜が答えると真も吹き出して笑う。 「あ、ただ、沢田さんは窓口ですので面白くはないかと…。」 この間話しただけでも、沢田のプライドの高さは水菜にも分かった。 これを聞けば面白くないだろうという事も予想出来た。 「んー?でもこのメール内容から行くと仕事関係ないよな?窓口だけど、向こうの担当者と仕事の話をしてるわけで、期日とか仕様とかな?そういう話が向こうの社長と出ないなら問題ないだろ?あくまで社長の趣味にお付き合い?沢田はそういうの嫌なんだろうから、いいんじゃないかな。俺も勿論、今は相手をしてられない。」 真の言葉に水菜は心配そう聞く。 「アプリ、大変?ごめんね仕様変更、無理にでも断れなくて…。」 「水菜は営業じゃない。そんな事は気にしなくていい。キツイ事相手に言われたらいつでも言えよ?交代する。」 「真、知らないでしょ?仕事が絡むと、私結構、強気よ?」 にこりと笑い、これで帰りますと水菜は頭を下げて階段を降りて行った。 見送りながらポツリと呟く。 「…知ってるよ?冷静で怒ると怖い。営業も行けそうだと幸人も話してた。俺が反対したんだ。営業なんかやらせたら会社にはいないからな。」 (さすが俺……。) 自画自賛して、画面を進める。 水菜が来ると仕事は捗るといつも真は思っていた。
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