嵐の前の。

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「いつまでもランチ会議が嫌とか?そんな我儘をいう歳ではないぞ?」 自慢気に話す真に向けて視線を送る。 (いつも言ってますけど?) 「目が…何か言いたそうだな?」 と言われて、目線を逸らした。 「いえ?ランチ会議が終わり次第、立花が合流してベターに移動になります。秘書として私もご一緒しますが…。」 そこで真が席を立ち上がる。 「水菜?倉田じゃないのか?岩永いるんだぞ?」 昔、当時のベタークリエイティブという会社の社長をしていた岩永に、水菜は殴られた経験があり、真は未だにそれを根に持っていた。 「もう平気です。岩永社長はきちんと謝罪して下さいましたし、降格をされてから努力の上、社長に返り咲いたのですからもう大丈夫ですよ。それに佐藤にはまだ同席は荷が重く、倉田は休みに入りますから引き継ぎを考えたら最初から私が行く方が効率的です。」 「ええぇ〜〜!俺は嫌だなぁ〜。」 捻くれた口調で言う真に向かい、水菜は決定打を口にする。 「私がご一緒では嫌ですか?岩永さんは何も出来ませんよ?だって真がいるでしょ?」 笑顔を向けて言うと、にんまりと笑顔を見せて机の向こうに水菜を呼ぶ。 「来て!こっち!」 「……?」 不思議顔で机を回って、真の椅子の横に移動する。 「見て!ちょっと遊んでよ?」 パソコンに繋がれているコントローラを渡された。 「これ…。サードのミニゲーム?出来たの?」 画面を見て思わず声を出した。 「明日、引き渡しって事で今日中に話出来るか?忙しいだろ?」 (それで機嫌が良かったのか…。) と思いながらミニゲームを操作した。 サイトの横に付けられるミニゲームだけにすぐ終わる。 水菜はそれを見つめて微笑み、真の顔を見た。 「楽しいです。時間が短いけど細かいところも可愛くて、主婦はちょっと休憩で楽しめますし、難しくもないから苦手な人も出来ますね。真のこういう…誰でも遊べるゲーム、私大好きだわ。」 水菜に言われて真はよっしゃ!とガッツポーズを出した。 最初からこのゲームをやらせたくて引き留めたのだと水菜も気付いた。
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