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秘書室に戻るとすぐサードの上野に電話を入れた。
引き渡しは明日と伝えると、納期日より早い事もあり喜んでくれた。
事前確認として社長から上野のパソコンに試作として送ることを伝えると、確認して折り返し喜びの声が来て、水菜も安堵した。
上野とのやり取りと並行して、英語を訳していた。
今では机の上に英語の辞書が常に置かれている状態になっていた。
「日本語と英語が混ざっているメールって…変な感じしますね?」
通りすがりに覗いた佐藤が言う。
「まぁ…そうね?私も最初は戸惑ったけど、慣れたわ。逆に日本語が書いてあると凄いって思うわ。教えてない言葉が書かれていると勉強されていると分かるから、独学で凄いって…。社長になる人って、何処か普通の人とは違うのかしらって思いがちだけど、案外、努力家なのかしらね?」
水菜がコーヒーを受け取りお礼を言うと、佐藤はベターの事について聞いていいかと付け足した。
「ベタークリエイティブとは共同開発も昔してますよね?今回は新規の依頼で共同開発でもないですよね?ベタークリエイティブはそれなりに大きな会社ですし、うちに依頼しなくても、と思うのですが…。」
「うん、まだ話を詳しく聞いてないからなんとも言えないけど…。多分ね?」
水菜の言葉に頷きながら、佐藤も椅子に座る。
「ベタークリエイティブさんも少し前にエンジニアが独立したとかで、仕事の割にSEの人数が少ないのだと思う。うちもそうだけど、信用商売で一度受けた仕事を無理ですって断ると次がなくなる可能性があるでしょう?外部に委託してでも受ける必要がある。」
「紹介してくれたら良くないですか?それじゃあ、うちはベターの下請け扱いじゃないですか。」
プクッ頬を膨らませて佐藤は返した。
「紹介したら、無理だからって返事したのと同じでしょ?持ちつ持たれつ…助け合いですよ?可愛い顔が台無しよ?」
くすくす笑いながら水菜が言うと、佐藤は照れた様に笑い、仕事を開始した。
お盆休みに後3日で入る。
ベタークリエイティブはその前にこの仕事を纏めたいと考えている。
初めてのアメリカ企業との仕事で、真はお盆中、休みはない。
9月に入ってからその時の仕事状況を見て休む事になっていて、水菜もそれに合わせて休む事にしていた。
お盆中は託児所も休みなので、社長室と秘書室に子供を連れて来る許可は取っていた。
人は少ないから、気兼ねなく連れ来れると言う利点はある。
ノートパソコンを見ながら、日本語訳を読む。
G、forestの社長は気さくで明るい人柄だと文面で分かる。
最近は、「Hello、mizuna」と書いてある。
チームリーダーを七瀬 真として、サブリーダーに茂野を置き、G、forestのシステム開発はスタートしていた。
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