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水菜が最初の喧嘩で家出してから約二か月後。
高橋のチームが受けていたシステムの仕事が無事に終わり、チームのお疲れ会と解散会を兼ねて会議室でお祝いをする事になった。
高橋 知樹と倉田 芳佳の結婚前祝いも兼ねていた。
高橋は元は秘書として入り、今はエンジニアとしてシステム構築やアプリ制作など、依頼された時々でチームを率いて仕事をする重要人物であり、倉田 芳佳は社長付き秘書として敏腕を発揮し、結婚後も新人教育にあたりながら水菜と社長秘書を継続する事になっていた。
その二人が結婚するのだから、今回の仕事が長引くと結婚式もやばいかもしれないという空気が流れていて、無事に終わった事でお祝いムードで祝杯を挙げていた。
「社長!社長も如何ですか?」
「あ〜……。結婚式も参加するしな?俺は仕事してるよ。水菜は行っておいで。」
水菜の誘いにも不機嫌そうな顔で真は答えた。
アプリ開発が進んでいない事は、相手会社の窓口となっている水菜には良く分かっていた。
尻を叩いて出来るものならば叩くが、そういう物でもない。
出来ない時はどうしたって出来ない。
水菜にできる事はフォローと気分転換、煩わしい会社間の愚痴や注文を真の耳に入れない事位だ。
「じゃあ、少し顔を出してくるわね?何か摘む物貰って来ます。コーヒーもね?」
「ああ、お願い。」
素っ気なく答えて顔も向けない。
水菜は静かに社長室のドアを開けて廊下へ出ると、ドアノブを音がしない様に静かに閉めた。
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