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G、forest社長の趣味とも言えるメールを訳し終えて読む。
(水菜、そっちは変わりない?僕はそちらの仕事は全面的に信用して任せているけど、うちの担当者が導入する予定のシステムの話が微妙にずれていると言うんだ。そちらの担当者には何度も伝えているというのだけどね。水菜からも社長に確認してもらえないかな?システムが出来上がってから要望と違うではあんまりだからね。仕事の話はこれで終わり。今度、こっちで咲いている綺麗な花の写真を添付するよ。楽しみにしてて。)
読み終えて少し考える。
ここまで何度もメールのやり取りをしていて、スティーブが仕事の話をする事が初めてだった。
(……だとしたら、これは案外、大事?)
社長に話を報告して、窓口担当者である沢田にも確認をしようと考えて、お昼である事に気が付いてお弁当を出した。
ベターに行く時間は午後一で、その前に社長のランチ会議の場所まで移動しなければいけない。
慌ててお昼ご飯を食べる。
倉田がしばらく休む間の穴は大きいと水菜も実感していた。
社長と副社長と無事に合流して、数年振りにベタークリエイティブと書かれたフロアに足を踏み入れた。
ベタークリエイティブの会社に入ると内装も随分変わったなぁと、呑気に考えながら廊下を案内され、キョロキョロしながら真の後ろを歩いていた。
「水菜?平気か?」
ここ数年、なかった言葉を最近の真は事あるごとに言う。
廊下を歩きながら小さな声で、心配そうに聞いて来る。
「大丈夫。真がいるもの。」
笑顔で答えると、嬉しそうに笑い軽快に歩き出す。
(子供みたいなんだから……。)
くすりと笑うと少し後ろにいる副社長に耳元で囁かれる。
「良かったよ、仲直りしてくれて。いつ口が滑るか心配だったんだ。うちも離婚の危機だからね?」
「そ、それはすみません。」
と小声で答えると、ドアの前で秘書が停止してドアを開けて部屋へと誘導した。
応接間に通されて、七瀬社長と立花副社長が座り、水菜は二人の後方の壁に立っていた。
スケジュール帳を開いてペンを持ち、いつでもメモできる状態で相手を待った。
間もなく、社長に就任した岩永が部屋に入って来て、水菜は無言で頭を下げた。ベターとの打ち合わせは順調に終わったが、真はその間終始無言で岩永は苦笑していた。
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