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「言いたい事は分かるし、俺も依頼には添いたいが……水菜、メール確認全部してないだろ?俺のアドレスにスティーブからメールが届いてる。読むぞ?」
『エターナルエモーション、ミスター七瀬。
我が社の担当者が何度もお願いしている事を、そちらの担当者は耳も貸さずに聞き入れられないと斬り捨ててしまわれた。
そちらはどうか知らないが、私は私の会社の担当者を信頼して仕事を任せています。その担当者がそちらとこれ以上仕事を続けられないと言うのならば、考えなければなりません。私が信頼する担当者が納得の行く回答をどうか宜しくお願いします。』
真が読み上げたメール内容を聞き、水菜は訳が分からないまま目の前の真に質問する。
「…真?担当者が納得行かないと契約を破棄するという事?」
「そうなるね?しかも契約ではこちらの不備で破棄の場合、損害賠償を払う事になっている。」
「こちらの不備?不備な事はしてないわよね?」
恐々、水菜は真の顔を見て訊き返した。
「向こうの担当者が何度もお願いしている事を、そちらの担当者は耳も貸さずに斬り捨ててしまわれた……これを不備と言うのだろうな?何度もってとこが味噌だな?」
「悠長に言わないでよぉ〜。賠償なんて出来るの?」
他人事の様にのんびりとした口調で話す真を見て、水菜は情けない声を出した。
「出来るが痛手だな。今からスティーブに電話…寝てるかな?向こうが仕事が始まる時間に電話入れるよ。沢田にも同席させて…。」
真が言う言葉を水菜は考えながら聞いていて、直ぐに考えていた事を口にした。
「ね?社長じゃなくて、社長が信頼して任せた担当者にまずは謝りを入れて、相手の意見を聞くべきじゃない?それで出来るが出来ないか、契約通りか違うなら変更が可能か不可能か、先ずは話すべきじゃない?」
考えた事を真の目を見てはっきりと言う。
「社長に話した方が早くないか?」
きょとんとした顔で真は答えた。
「そうだけど、ここに来るまでスティーブは黙認してたのよ?担当者を信頼してでしょ?その信頼している担当者を無視して飛び越えて、この話をスティーブに通すのはどうかと思うの。メールには信頼している担当者が納得のする回答を…と書いてあるのでしょう?」
読み上げてもらったメールを思い出しながら水菜は言う。
モニターに映されたメールを真も見つめて唸っていた。
「G、forestという会社はアメリカ企業だけど信頼とか信用を大事にしているわ。相手企業の社長が信頼している自社の担当者を飛び越えての連絡は…良くないと思う。」
「その考えで行くと俺が出るのもって話になるぞ?沢田出したら平行線だろ?話を聞いてみない事には分からないけど、今の状態を見る分にはダメだろ?」
また少し水菜は停止して考える。
無言になって数秒してから、思い付いた様に声を出した。
「ね、私、担当者にメール出してもいい?担当者から来てたから返信で。ちゃんと「秘書、石原」で出すから。」
「水菜?窓口になる気か?英語出来ないのに?無茶言うなよ。」
ため息を吐きながら、真は水菜の顔を見つめた。
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