気に入らないんですけど!

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水菜の姿を見ると同時に、沢田は真の机の前からドアの前に立っていた水菜に近付いて行き、怒鳴り始めた。 「あなた!何したのよ!!窓口担当者を通さないで…。知ってるのよ?G、forestの社長と個人的にメールのやり取りをしてたそうじゃない!社長に何を吹き込んだの?私の邪魔をするって事はこの会社の、真の邪魔をしてるって事なのよ?奥さんの立場にいて会社の中でも大きな顔して、そんなのあなたの実力じゃないじゃない!気に入らないのよ!!妻は家にいなさいよ!会社まで旦那を見張らないと信じられないの?個人的感情で会社をかき乱さないで!」 水菜に詰め寄る沢田を幸人が間に入り抑えると、真も席を立ち水菜の前に立った。 水菜は真の背中に隠された。 「沢田さん、落ち着いて?今回の話から方向性が違うし、第一、石原さんは社長の妻として会社にいる訳じゃない。結婚前からここで働いていたし、真が強引に口説き落として結婚したからどちらかと言うと被害者は石原さんだ。」 立花が言うと沢田は立花と真を交互に見てから、 「手を放して下さい。用件をお聞きします。」 と、小さな声だがはっきりとした口調で言う。 立花副社長が間に入った事で会社である事を思い出した様に見えた。 それでもその目は水菜の方向を睨んでいた。 だから真は水菜の前から動く事なく、片手を後ろに回して、水菜の腰辺りに当てていた。 「仕事の話に戻す。昨日、再度確認だと聞いたはずだ。沢田さんは契約に変更はない、問題はないと答えた。そうだね?」 真の問いに沢田は頷く。 「だけど!向こうの担当者は問題ないとは考えていない。こちらの担当者と意思疎通が出来てない、信頼や信用が出来ないと言っている。これは明らかに君の落ち度だ。信用と信頼を窓口として得られなかったという事だからね。」 いつもの様に相手には興味なさそうに、冷たい言葉で真は話す。 「でも!契約に変更はありません。信用と信頼?電話でどうやってそんな物を築けると?無理ですよ!赤の他人、会った事も、顔を見た事もない、それで信用してくれ?無理でしょ?信用出来ないから契約書があるのでしょう。それを言い出したら何の為の契約書なのですか?」 机の横まで立花に戻されて、水菜から距離を取られていた沢田は、横にある真の机を片方の手でバン!!と叩いた。
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