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カミサマはあきらめた!④
「Tulta!!《トゥータ!!》(撃て!!)」
ガシャン!!
老紳士はいきなり手にしたスマホを壁にぶつけ粉々にした。
「「「ど、どうなされたのですか?」」」
「ああ、ごめんなさい。ちょっと嫌な事が唐突にありまして、失礼いたしました」
老紳士の常軌を逸した行動に三人娘は目を丸くして驚き、やってしまったことを即座に後悔したらしい老人は、娘たちに謝罪の言葉を述べた。
「…話を戻しましょう。あなたたちは彼ら一党の、頭が少々おかしく、多少お寂しい方々と〝毛〟について言い争いをしていましたね?」
「「え、ええ…。毛っていうとなんか生々しいですけど」」
「そうです。毛っていうとなんか剃毛したくなりますけど」
「「えっ??」」
「え?」
「「「そこ詳しく!!!」」」
再び紳士然とした態度で話し出した老人を無視して、金髪さんに亜麻色髪さんが先ず尼さんの発言に眼を開き、んでぇ~、つぎにィ~、ハゲの阿呆共がァ~、なんかエロイことを勝手に想像してしきりに〝剃毛した箇所〟を聞き出そうとした。
「あ、あの、紳士淑女の皆様。御静かに願えませんか?」
老紳士はやや狼狽しながら、三人づつに分かれた聖職者(笑)たちに落ち着くよう促した。
無理だった。
「だから!妖怪エロハゲ散らかし共が考えるような箇所は剃ってませんて!!」
「嘘だね!ちゃんと見ればわかるもんね!」
「そうだそうだ!僧衣脱げよ!脱いで証明してみろよ!」
「僧衣を(ノ゚∀゚)ノソーイってしてよ!はやくはやくぅーん♪絶賛待ってるからァ~♪」
「「うああ…」」
尼さんを取り囲んだ性触者たちは、どこから持ってきたのか普段から持っているのか、一眼レフ高解像度のカメラを構えて尼さんの周りで肩を組み列となって回り出し、まるでキャンプ・ファイヤーを囲んではしゃぐ中坊のようにフォークダンスの〝ジェンカ〟を替え歌で踊り始めた。
「「「熱!望!さあ脱いで!感!動!こっち向いて!劣!情!股間が熱いよ!」」」
「いやぁ~~~~~!!」
「お前ら聞けよ!わしの話を!このド阿呆のどくされどもが!!」
グァーーン!!
蹴られたアルミ製の大きな丸いゴミ箱が大きく凹んで祭壇に当り、不規則に飛んで腕をY字型にして十字架に掲げられたキリスト像の足元にゴロンと転がった。
「おお!!これはとんだことを!!」
即座に老紳士に戻った白髭の御老体は、祭壇の前で傅き胸の前で十字を切り、神とキリストに対して首を垂れて許しを請うた。
「皆さまにも謝罪いたします。いくら常軌を逸した行動をあなた方がなさっていたとはいえ、斯様な暴力じみたことをするべきではありませんでした」
「「「あ、い、いえ私たちは被害者ですけど…。うん、まあ、ちょっとびっくりしましたが、その、お気になさらずに…」」」
三人の神と仏にその身をささげる淑女たちは目を潤ませ混乱しつつも、老紳士の謝罪を受け入れた。
「Kiitos《ありがとうございます》 ところであの御三方は?」
「あの、えっと、云いにくいんですが、お爺様のうしろに…います」
「うしろに、ですか?」
老紳士の問いに、亜麻色髪の修道女が口籠りながらおずおずと応え、指を祭壇に向け指示した。
老紳士がおもむろに振り返ると、十字架にY字型で掲げられたキリスト像を先頭に、自らの腕を使ってアルファベットを造り出した三バカがドヤ顔で立ち。
「「「ヘイ!Y・M・C・A!!!」」」
「お前ら破門------------!!」
老紳士は此の世のものとは思えない怒りに満ちた表情で、大地を揺るがし空気をたぎらせて叫んだ。
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