私の憧れの人(黒髪少女視点)

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私の憧れの人(黒髪少女視点)

 私には憧れの人が二人いる。  それは、ハリウッドの肉体派俳優であるステイサムと、あと一人は、同じ学年の新居カオルくんだ。  新居カオルくんは身長が175センチくらいで、すごく肉厚な体をしている。  肉厚っていうのは、胸の筋肉とかがすごく厚いことね。  見たことはないですよ!  学ランの上からでもわかるくらい盛り上げっているし、太っている人じゃないので筋肉以外にありえないという結論に至ったの。  あと、頭はスキンヘッドに近い丸刈り。学ランじゃなくて、カラフルなシャツを履いてその辺歩いていたらヤクザの人に見える感じ。  だから、結構遠巻きに見ている人が多い。  私も、遠巻きの人の一人なんだけど、怖がっているわけじゃないの!  だって、新居くん、すごくステイサムに似ているの。  最初気になったのは、その理由。だけど、見ていたら、色々面白いなあと思ってきて。  だって、遅刻しそうになっていて、走っているなあと思ったら、学校近くに来ると急に歩くの。それも、ちょっとかっこよく歩こうとしているしてるのがわかるの。  他にも楽しそうに話している人たちが近くにいて、絶対に話に加わりたいと思っているはずなのに、いざ話しかけてられるとクールなふりをしたり。  本当、新居くんは不器用な人だと思う。 「サキ!また、あんた新居見てんの?あんなやつ見て何が楽しいの?」 「ルリ。あんな人ってひどいわよ。新居くん、すごく可愛いのよ!」 「か、可愛い?あれの?そんなこと言うのはあんただけよ。っていうか、告白とかしないの?」 「え?告白?」 「だって、もう直ぐうちら卒業だよ。こうして見れなくなるじゃん。付き合ったらデートとかもできるし」 「な、何言ってるのよ!新居くんの大学は、七宮大学から近くから大丈夫なの!」 「近いって、あんたわざわざ見に行くつもり?」 「うん。大学生の新居くんも見てみたい。きっと黒のポロとか着たらすっごく似合いそう!」 「黒のポロ?なんか指定が細かいんだけど」 「新居くんなら絶対に持ってそうよ!」 「うわ。あんた、その思い込み。ちょっと怖いわ。っていうか、やっぱり告白したら?どう見ても好きとしか思えない。新居は絶対に彼女いないはずだから、多分すぐオッケーだと思うけど」 「だから、そんなつもりはないんだって!」 「自信がないの?まあ、あんた話したことないもんね。そうだ、一回話してみたら?」 「は、話す?無理無理!それは無理!」 「無理じゃないって。少女漫画作戦でいけば大丈夫!」 「少女漫画作戦?」  私はルリに乗せられる形で、その少女漫画作戦を実行することになった。  っていうか、その作戦っていうのが、もう。  ハンカチを目の前でさりげなく落として拾ってもらうっていうもの。  恥ずかしかったけど、やってみたら新居くんが拾ってくれた。  そして渡してくれようとしたのだけど、  彼を目の前にしたらなんか頭に血が上ってしまって、逃げてしまった。    ごめんなさい。  悲鳴をあげたと思う。  怖いんじゃないないんです!  胸がドキドキしすぎて、もうどうしていいかわからなくなっただけなんです!  あの後何度か謝ろうとしたけど、新居くんの教室に入る勇気もなくて、結局あきらめてしまった。  ルリにその後もせっつかれたけど、だめで、三日が過ぎたある日。  新居くんが突然現れた。  目の前にヌーって感じで、あの瞬間、私の頭の中は真っ白。  そして、また逃げてしまった。  前回と同じでごめんなさいと思ったけど、猛スピードで追いかけられて、私は逃げるしかなかった。廊下を走り回り、後は外しかないと靴箱で靴に履こうとしたら、つかまった。  彼の手は大きくて、私の手首をがっちりとつかんだ。   「な、なんのようですか?」  見上げると彼の瞳が私を獰猛に見ていて、さすがに怖かった。  普段は怖くないんだよ。  だって、もう食べられるか、そんな瀬戸際を思わせる視線だった。  手を掴む力が強まって、視線がさらに厳しくなった。 「離してください!」  反射的にそう言ってしまって、後悔した。  一気にみんなの注目を浴びてしまった。恥ずかしかったけど、それは成功で新居くんは手を放してくれた。  だから私にはまた、逃げてしまった。  その後、彼は追いかけてこなかったけど、その騒動を聞きつけたルリが「告白よ!」と興奮してた。  そうかもしれない、そう思ったけど、私はルリに対して首を横に振った。 「そんなことないから。ハンカチを返すだけだったと思う」 「ハンカチ?だったら、なんで追いかけるの?おかしくない?」 「そうだけど」 「少女漫画作戦成功ね。バカにしていたけど、やっぱり恋愛のバイブル的存在なのね。私も色々試してみるわ」  それはどうかと思うけど。  だいたい告白なんて決まっていないのに。  興奮するルリを抑えながら、私は結局新居くんに再び会わずに帰宅した。    翌朝、花壇の水やりのため、早めに学校にきた。  そしたら、新居くんが「おい」って、気配もなく現れて声をかけてきた。  逃げるしかないって思ったのに、彼は私の手を掴む。 「は、放してください!」  二度目なのに、またどきどきして、私は手を振り回して、逃げようとした。  そしたらくしゃくしゃになった紙袋を渡された。  ーーあ、紙袋?中身は、ハンカチ。きっとそうだ。  そう思うと、がっかりしてしまって、私は泣きそうになる。  告白なんて期待していた自分が恥ずかしくて、消えてしまいたかった。 「あの、俺と付き合ってください」 「え?」  そしたら上からそんな言葉が降ってきた。  見上げると彼がいつものクールな様子を崩して、困ったような顔をしていて、とても可愛かった。  ーー付き合ってください、そう言ったよね?  付き合ったら新居くんと違う学校に行っても会える。  だから私は素直に返事をした。 「はい」  私の返事に、新居くんは驚いていた。  早まったかな。私。でも付き合ってくださいって言ってたよね?  不安いっぱいの私は、涙がこみ上げてくるのがわかった。  泣いたらいけない。泣いたら。  私はぐっと涙をこらえて新居くんを見上げた。 「よろしくお願いします」  ぺこりと頭を下げられ、私も「よろしくお願いします」と返す。  そうして、私は憧れの新居くんと付き合うことになった。  付き合っていくと、実は私の名前を知らなかったことや、あの告白も動揺から口走った言葉だってわかったけど、いいんだ。  だって、憧れの人と一緒にいられるんだよ。   しかも、お互いにステイサムが大好きで。  好きな映画を一緒にみて、楽しめる。  こんな嬉しいことはない。 (終)    
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