Case7.

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全員が揃ったところで、今日は食事をしながら今後の日比谷家について話合おうと、お義母さんが取り仕切った。 各々談笑しながら食べたり飲んだりしている。だが私は全然箸が進まなかった。出される料理はどれもおいしそうだけど、この緊張感は食欲を鈍らせる。 あぁ、早く時間がすぎないかな。 「颯士くんには付き合っている子がいるみたいだけど、要くんはどうなの?」 どこからともなくそんな声が聞こえてきて、ハッとする。経営陣、参与の奥さんが一番奥の席から口にしたものだった。 「今はいません」 「意外ねー。要くんなら女性の方が放っておかないでしょうに」 「そんなことないですよ」 「またまた謙遜しちゃって」 こういうおばさんは、お見合い話とか持ってきそうだな。親せきに一人はいそうな、ちょっとお節介な人といった感じ。 「跡取りなんだから、早く身を固めないと」 「はい、でも僕は留学の夢もありますし、医学の道をもっと深めたいと思っていますので、跡を継ぐなんて、まだ考えられないです」 「じゃあやっぱり颯士くんがいいのかしら。お父様と同じ外科医だし」 勝手に話が進んでるけど先生はどう思っているんだろう。ずっと黙ったままで、全く意見を言おうとしない。 でも本当に先生が院長になっちゃったら、すごいことになりそうな気もする。スタッフが恐れて、退職者が増えるんじゃ……。 「でも、ほら、颯士くんは、あれだろ」 そこで参与が意味ありげにつぶやいた。その声に、周りいた親戚がざわつき始める。あれとはつまり、養子だといいたい? そんなこと先生の前で言うなんて……しかも否定気味なのが、ちょっと癇に障る。
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