Case7.

14/24
4048人が本棚に入れています
本棚に追加
/182ページ
「早かったわね。宮永さんも、よく来てくれました」 そう声をかけられ慌てて頭を下げる。そして魔女は私のことを、颯士の彼女だとみんなの前で紹介した。 「颯士、今日はおじさまたちも来られているから、粗相がないように」 強い口調で、魔女、いや、お義母さんがコソッと小声で言う。そんな二人の掛け合いを見ていると、ふとあることが頭を過った。 愛人の子を今まで育ててきた彼女の心境はどんなものだったんだろうって。そして、日比谷先生も……。 二人の関係は、うまくいっていたのかな……。 「言われなくてもわかってる」 「相変わらずね」 不愛想な先生に、お義母さんはそう吐き捨てるように言うと、元居た席へと戻っていった。 するとその間に、日比谷先生がコソッと 「うるさい連中がたくさんいるけど、黙って座っていればいいから」 と私に耳打ちした。私はよくわからないままに、はい、と静かに頷いた。 それから少しして要先生もやって来た。私を見るなり、満面の笑みで手を振ってきて、そして私の隣に腰を下ろすと、手を合わせ謝ってきた。 「ごめんねー、俺がついうっかりしゃべったばかりに、宮永さんまで呼ばれるはめになって」 「い、いえ……」 「あれ、なんか今日の宮永さん、すごく綺麗だね。それ、颯士のため?」 「え? あの、それは」 「わぁ照れてる。可愛い~」 この空気を感じているのか敢えて気が付かないふりをしているのか、相変わらずの軽いノリの要先生。だけど今はその明るさに救われる。要先生がいてくれてよかった。 そして要先生は「あそこいるのはさ」と、こっそりおじさんたちのことを教えてくれた。 彼らは院長の兄弟や親せきにあたる人達らしい。つまり魔女にとって、意見しづらい人達ということだろう。
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!