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「今まで同族でやってきたんだし。颯士くんより、要くんが引き継ぐのが妥当な判断じゃないか?」
酔っているのか、ズバッと言った参与に、思わずムッとしてしまう。
だけど日比谷先生は気にしていないのか、我関せずと言った感じ。こんなにも腹を立てているのは私だけなのだろうか。
「まぁそれもそうね。愛人の子だって世間にバレたら厄介だものね」
「ネットにそういうこと書かれたら一発だっていうじゃない」
「奥様も苦労されたでしょうね。人がよろしいんだから。私だったら絶対受け入れられないわ」
ヒソヒソと奥様達が話すのが聞こえる。なんてデリカシーがない人たちなの。例えそれが事実でも、子は生まれてくる家を選べない。子供だった先生にはなんの罪もないのに……。悔しくて喉の奥がキュッと詰まったような感じになる。
「要くんがよければ、近々公に発表しよう。形だけでもそうしていたほうが、院長も安心するだろうし」
参与が名案とばかりに口を開く。それに、奥様方が賛同の声を上げる。
「それならやっぱり、家庭を持っていた方がなにかといいわ。いいお嬢さん、紹介しましょう」
もはや彼らの独壇場だった。どうしてお義母さんは何も言わないんだろう。もしかして、先生がこんな風に言われているのを、全く気にしていない? むしろ賛同しているとか?
「あの」
気が付いたら、後先も考えずに声を上げていた。一気に視線が集まる。
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