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「お前らこそ何者だ」
アントゥスは武器を構えたまま、武装した人間たちを見渡した。その中心に、緊張した面持ちの金髪の少女がいた。少女は小さな体から声を張り上げる。
「我々は月虹の騎士団! この森の夜棲者を狩りにきた者たちだ!」
アントゥスは微かに見える紋章を見て、あの日の思い出が溢れた。
「お前らか」
アントゥスは毛穴から血を流すと、サーベルに纏わせていく。場はその面妖な光景に、息を止めていた。
「俺たちを殺しに来たのは、お前らか」
「待て!」
飛びかかりそうなアントゥスを、コルネロは羽交い締めして止めた。
「邪魔をするな」
「邪魔じゃねえ! こんな大勢いるのに勝てるわけねえだろ。夜棲者を殺せる奴らだ。相当強いぞ、こいつら」
多勢に無勢。アントゥスは冷静ではない。激情が心を覆い、冷静が完全に隠れてしまっていた。
「アンリーヌも何か言ってよ!」
「私はアントゥス様のご意向のままに」
「馬鹿なの!? このままいくと死ぬぞ!」
アンリーヌは微動だにしない。指令待ちといったところだろうか。
ああ、もう仕方ない。
コルネロはアントゥスの頸に噛み付くと、一気に血を吸い上げ昏睡させ、肩に抱えて跳んだ。
後ろから「待て!」と声がするが、待てと言われて待つわけにもいかない。アンリーヌもアントゥスと離れるわけにはいかないと、コルネロの後を追った。
「何をするんですか」
「こいつを死なせたくなければ、俺についてこい! この森は俺が生まれ育った場所だ。奴らより土地勘がある。こっちだ!」
コルネロは森を知り尽くしていた。土地勘のない彼らは、程なくして見えなくなった。
コルネロはしばらく空を飛び、様子を伺っていたが、いなくなったことを確認し、アントゥスを下ろすと、血を返した。
「おら、もういなくなったぞ」
アントゥスはむくりと顔をあげると、コルネロを一瞥し、耳をかいた。
「悪かった。周りが見えていなかった」
コルネロは森を抜けると、火を焚き、腰を下ろした。
「話してくれよ、お前のこと。これまで何があったのか」
コルネロは黄色い瞳で、アントゥスを真っ直ぐ見据えていた。
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