Episode1 呪われた王子

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「お前らこそ何者だ」  アントゥスは武器を構えたまま、武装した人間たちを見渡した。その中心に、緊張した面持ちの金髪の少女がいた。少女は小さな体から声を張り上げる。 「我々は月虹の騎士団! この森の夜棲者を狩りにきた者たちだ!」  アントゥスは微かに見える紋章を見て、あの日の思い出が溢れた。 「お前らか」  アントゥスは毛穴から血を流すと、サーベルに纏わせていく。場はその面妖な光景に、息を止めていた。 「俺たちを殺しに来たのは、お前らか」 「待て!」  飛びかかりそうなアントゥスを、コルネロは羽交い締めして止めた。 「邪魔をするな」 「邪魔じゃねえ! こんな大勢いるのに勝てるわけねえだろ。夜棲者を殺せる奴らだ。相当強いぞ、こいつら」  多勢に無勢。アントゥスは冷静ではない。激情が心を覆い、冷静が完全に隠れてしまっていた。 「アンリーヌも何か言ってよ!」 「私はアントゥス様のご意向のままに」 「馬鹿なの!? このままいくと死ぬぞ!」  アンリーヌは微動だにしない。指令待ちといったところだろうか。  ああ、もう仕方ない。  コルネロはアントゥスの頸に噛み付くと、一気に血を吸い上げ昏睡させ、肩に抱えて跳んだ。  後ろから「待て!」と声がするが、待てと言われて待つわけにもいかない。アンリーヌもアントゥスと離れるわけにはいかないと、コルネロの後を追った。 「何をするんですか」 「こいつを死なせたくなければ、俺についてこい! この森は俺が生まれ育った場所だ。奴らより土地勘がある。こっちだ!」  コルネロは森を知り尽くしていた。土地勘のない彼らは、程なくして見えなくなった。  コルネロはしばらく空を飛び、様子を伺っていたが、いなくなったことを確認し、アントゥスを下ろすと、血を返した。 「おら、もういなくなったぞ」  アントゥスはむくりと顔をあげると、コルネロを一瞥し、耳をかいた。 「悪かった。周りが見えていなかった」  コルネロは森を抜けると、火を焚き、腰を下ろした。 「話してくれよ、お前のこと。これまで何があったのか」  コルネロは黄色い瞳で、アントゥスを真っ直ぐ見据えていた。
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