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何もかもダメだ 教職について1年目 先生として中学校に赴任し やる気満々で 教えられることがとても幸せに思えた しかし いつも通り国語の授業をしていたときだった 一人の男子生徒が言った 「授業つまんない」 その言葉で 私の心は一瞬で壊れた 今までやってきたことは無駄だったのだろうか 私はこんなに一生懸命やっているのに 生徒にそれは届かないのだろうか 後悔や屈辱 怒りや悲しみが頭の中でごちゃごちゃになり 授業どころではなくなってしまった さらに 追い打ちをかけるように他の生徒たちが言った 「それな、めっちゃ眠いし、つまんない」 「国語一番嫌いかも」 「先生の授業子守唄みたいww」 成績優秀な生徒も 今はどうにもならないと諦めるように机に突っ伏して居眠りに勤しんでしまった それがまた自分のプライドや自信を思いっ切りへし折った もう何も分からない もう何も考えたくない もう何も見たくない もう消えてしまいたい そう思った時には既に 教室を飛び出していた 走る 他の先生が声をかけてくれるが 何も聞こえない 聞きたくない ふと我に返ると 自分の家にいた オンボロアパートだ 6つも部屋があるにも関わらずもう大家さんと自分しか住んでいない 部屋は広く キッチンもある お風呂とトイレは別だし 快適に暮らせている  今 この時間を除いて ボーっと天井を見る 汚いシミのついた天井だ 今自分はどんな顔をしているだろう 死人のような顔になってないだろうか もう死んだも同然かな ふいに お腹がなった こんな状況でも人間である以上腹は減る 部屋の隅にポツンと置かれた時計を見ると 既に時間は18時を回っていた カップ麵でも食べようと腰を上げた時 ふいにある匂いがした その匂いは全くいい香りなどでなく 匂いというより臭いといった感じの方が近かった 「…火事だ」 焦げ臭い 何かが燃えている 窓から外を見ると 煙が自分のアパートから立ち昇っていた どうすればいいのか分からない 今まで火事に遭ったことなど当然あるはずがない 精神的にも擦り切れており パニックに陥った こんなにもあっけなく終わるのか 頭で逃げようと考えても 体が追いつかない ああ お母さん お父さん 今まで育ててくれてありがとうございました そんな言葉までもが頭をよぎった 「先生!」 声が きこえた 「火事です!逃げましょう!」 生徒だ 私が何より好きで 今日誰よりも憎んだ  私の生徒だ 「先生、今日はすみませんでした。悪口を言った生徒数人で謝りに来たんです!そしたら家が燃えていて…」 横に目をやると 6人ほどの生徒が 狭い部屋にきちんと並んでいた 「ああ…」 光だ 私の光はこの生徒たちだ  暖かい この子たちが私を照らしてくれる 私はその光に応える そしてこの子たちがたくさんの人を照らし出して行けるように 私も全力を尽くそう 「さあ先生!つかまって!」 そう言うと 2人の生徒が同時に肩を貸そうと差し出してくれた 「ありがとう…!二人とも…!」 ああ!私!今までで一番幸せ!
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