新しい生活

10/18
前へ
/85ページ
次へ
「もう謝らなくていいよ。引越しして新しい高校に通ってやり直すから」 樹くんは、この前までの荒れていた樹くんと違い落ち着いていた。 「聞いたよ。それでも謝らせて。前に話した時に私一つ嘘をついた……私が岬なの。本当の年で登録するのが恥ずかしくて樹くんの情報で登録したの。 ファンの子から、私服や部屋を見たいって言われたから、服を買ってきて写真を撮ってから樹くんにあげた。樹くんの部屋の写真を勝手に撮らせてもらった。 本当にごめん。こんな事になるなんて思わなかった」 「そんな気がしてたから、もう良いよ。 こんな事ぐらいで高校に行けなくなるなんておかしいって思うよね。 わかってる。いじめなんて時間が過ぎれば無くなるだろうし、高校に行った方が良いって事くらい。いじめっていっても暴力を受けた訳じゃなく、からかわれるだけなのに。だけど、どうしても行けない。 お父さんに離婚するって聞いた、僕のせいで、僕さえいじめに負けずに高校に行ければ、こんな事にならなかったのに……」 樹くんが涙を堪えているのがわかった。 「樹くんのせいじゃない。全て私のせい。本当は離婚なんてして欲しくない」 これ以上言えば樹くんを責めてしまう。唇をギュッと噛んで堪えた。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

126人が本棚に入れています
本棚に追加